研究課題/領域番号 |
21K07658
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
泉 雅子 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (00280719)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 重粒子線 / DNA二本鎖切断 / DNA修復 |
研究開始時の研究の概要 |
重粒子線照射後のDNA修復タンパク質の局在を、蛍光抗体法やクロマチン免疫沈降法等により解析し、DNA二本鎖切断(DSB)修復に関わる4つの経路の比率や修復効率が、重粒子線のエネルギーや細胞周期とどのような関連があるか明らかにする。また、塩基除去修復に関わるタンパク質の欠損株やsiRNAを用いて、DSB近くに生じた塩基損傷やDNA一本鎖切断が、DSB修復経路の選択や修復効率に与える影響を調べる。さらに、超高解像度顕微鏡によりDSBと塩基損傷や一本鎖切断が共局在するか、空間的にどの程度広がっているのか解析し、重粒子線のエネルギーとDNA損傷の複雑度の関連を明らかにする。
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研究実績の概要 |
これまでの解析から、相同組換えと一本鎖アニーリングに関与するRad52は、重粒子線照射後に、線量に依存して電気泳動上で10kDa程度分子量が増加する翻訳後修飾が起きていることが判明していた。また、その修飾はX線照射後に比べて重粒子線照射後の方が亢進していた。Rad52は出芽酵母では放射線照射後にSUMO化され、その活性が制御されることが報告されている。ここで観察されたヒトRad52の翻訳後修飾がSUMO化やユビキチン化によるものであるかを確認するため、共同研究者よりFLAGタグを付与したRad52をテトラサイクリン誘導により高発現できるTRex-293細胞を得た。その細胞においてFLAG-Rad52を発現させ、X線照射後にFLAGタグを利用した免疫沈降を行い、SUMOあるいはユビキチンが共沈するかどうか検討したが、いずれも共沈していなかった。そこで、質量分析により共有結合しているタンパク質を同定するため、細胞をG2期に同調した後にX線で照射し、FLAG-tagを利用してRad52を大量に精製する系を確立した。 また、重粒子線照射後に一本鎖アニーリングが起きているのか検証するため、ヒトNB1RGB細胞を血清飢餓により静止期に同調した。そして、重粒子線を照射したところRad52の翻訳後修飾が生じたが、X線照射では翻訳後修飾は検出できなかった。静止期では相同組換えが起こらないことから、この結果は重粒子線照射後に一本鎖アニーリングが起きていることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重粒子線照射後の複数のDNA修復タンパク質の動態を解析することにより、重粒子線照射ではX線照射に比べてDNA切断末端の齧り込みに引き続き、一本鎖アニーリングへ進みやすいことを示唆するデータが複数得られた。一本鎖アニーリングは大きな欠失や転座を伴うことが多く、重粒子線照射では染色体異常の発生率がX線よりも高いことをうまく説明できる可能性がある。また、Rad52の翻訳後修飾の実態は、これまでの出芽酵母の解析からSUMO化であると考えていたが、それ以外の修飾である可能性が高いという予想外の結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)G1期の細胞を用いて重粒子線照射後にRad52をGFPタグで、DSBの指標であるリン酸化型ヒストンH2AXを蛍光抗体により検出し、Rad52と共局在しているDSBの割合から、何%のDSBが一本鎖アニーリングにより修復されているかを推測する。また、Rad52をsiRNAでノックダウンした時にDSB修復のタイムコースが影響を受けるか、リン酸化型ヒストンH2AXを検出することにより調べ、一本鎖アニーリングの関与を検証する。 (2)FLAG-Rad52を大量発現する細胞株からタグを利用してRad52を大量精製し、質量分析によりRad52が共有結合しているタンパク質を同定するとともに、修飾が起きているアミノ酸部位を同定する。 (3)Rad52の翻訳後修飾部位に部位特異的変異を導入し、修飾が起きないRad52を細胞内で一過性に発現させ、細胞内での局在がどのように変化するかを蛍光抗体法や生化学的手法を用いて解析し、翻訳後修飾の影響を明らかにする。 また、ゲノム編集により翻訳後修飾部位に変異を導入した細胞を作成し、一本鎖アニーリングの効率をレポーターアッセイにより調べ、翻訳後修飾の生理的意義を明らかにする。また、X線や重粒子線照射後の生存率を調べ、重粒子線照射におけるRad52の機能や修復経路選択に与える影響を調べる。
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