研究課題/領域番号 |
21K07661
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
北條 秀博 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (60638774)
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研究分担者 |
影山 俊一郎 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (60644979)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 1細胞解析 / 食道癌 / 放射線治療 / PD-L1 / マクロファージ / 免疫応答 / 腫瘍微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
食道癌細胞株を用いた研究の結果、放射線照射後に最も活性化される生体内pathwayとしてSTING, Type Iインターフェロンを起点とする免疫応答が非常に強く活性化されることを明らかにした。しかし、腫瘍組織内で生じる免疫応答については、腫瘍の微小環境を含めて総合的・網羅的に解析をすることが重要である。網羅的に遺伝子発現を解析できる画期的な手法である1細胞解析を用いて、放射線治療中の腫瘍組織内で生じる変化を細胞レベル、遺伝子レベルで明らかにし、放射線治療と免疫療法の相互作用や制御機構を明らかにすることで、至適な併用の基礎データとする。
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研究実績の概要 |
患者同意が得られた計5例の放射線治療対象の食道扁平上皮癌患者から採取した治療前(3例)、治療中~治療後7日以内(4例)、治療後1か月後(2例)の組織検体を用いたSingle cell RNA sequencingを施行した。上部消化管内視鏡にて採取された生検検体をMACS;Tissue Dissociation Kits (Miltenyi Biotec)を用いて細胞分離を行い、Single Cell 5' v1 Dual Index Gene Expression Libraries kit (10X Genomics)を用いてライブラリを作成し、Novaseq6000によるsequenceを行った。得られたFASTQファイルからR v4, Seurat v4、SingleRを用いてCell annotation, Gene expression analysis, Clustering analysis, 遺伝子発現解析を行った。その結果、放射線治療前、治療後いずれからも10000を超える細胞の単離、遺伝子発現解析が可能であった。細胞レベルでは放射線照射後にリンパ球の減少、マクロファージの増加が確認され、遺伝子発現レベルでも放射線によるIFN応答の増強や、VEGF pathwayの活性化などが確認された。 2022年度の成果として、前年度で解析した細胞群のうち、Macrophage、Monocyte、Dendritic cellの一部に、放射線治療後、PD-L1を強く発現する細胞群を見出している。さらにこの細胞群は、SIRPA, IDO1等の免疫抑制遺伝子を同時に強く発現する細胞であることも確認している。このような細胞群は、放射線治療と併用する免疫治療の標的となりえる可能性が高く、今後癌組織内での局在や、機能について解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者同意が得られた計5例の放射線治療対象の食道扁平上皮癌患者から採取した治療前(3例)、治療中~治療後7日以内(4例)、治療後1か月後(2例)の組織検体を用いたSingle cell RNA sequencingを施行している。 また、シークエンスデータ取得後の解析も予定通り施行されており、解析に十分量の細胞を得ているため今後の解析も予定通り施行可能である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では検体集積を完了し、シークエンス後の解析を進めている。 現在放射線治療後の微小環境変化として、リンパ球の減少、マクロファージの増加、マクロファージ内のPD-L1, SIRPA, IDO1の活性化について最も着目している。これらの遺伝子群はすでに免疫チェックポイント阻害薬が開発されており、放射線治療併用免疫治療の標的として、出口戦略の確立が可能な遺伝子である。一方でこのような放射線治療後のPD-L1陽性細胞の機能不明な部分が多く、今後は組織内局在や、隣接する癌細胞の解析などにより、これらの細胞の機能を考察し、治療開発につなげていく方針である。
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