研究課題/領域番号 |
21K07694
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
塩浜 直 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (10737034)
|
研究分担者 |
高梨 潤一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (00302555)
横田 元 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (20649280)
松本 浩史 千葉大学, 医学部附属病院, 主任診療放射線技師 (60745230)
舞草 伯秀 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (80631069)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 脳MRI / 定量解析 / 巨脳症 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
巨脳症性疾患の患者さんでは、発達遅滞や、てんかん、脳幹圧迫による突然死、脳腫瘍の合併を認めます。しかし、遺伝子変異のタイプや既存のバイオマーカーでは、合併症の予見は困難です。本研究では、巨脳症性疾患の患者さん及び正常対照者の3D-T1強調画像を、網羅的に構造解析し、巨脳症性疾患の予後予測のための画像バイオマーカーを同定する研究です。さらに本研究で、副次的に創出される日本人小児の脳構造の年齢別基準値と、撮像機種間の補正法は、希少疾患の脳MRI研究の基盤になると期待されます。
|
研究実績の概要 |
巨脳症性疾患の原因は、細胞増殖シグナルの亢進と先天代謝異常に大分される。細胞増殖シグナル(PI3K/AKT経路やヘッジホッグ経路)の亢進による先天異常症候群では、発達遅滞や、てんかん、脳幹圧迫による突然死、脳腫瘍の合併を認める。しかし、遺伝子変異型や既存のバイオマーカーから、合併症を予見する方法は未だ確立していない。 本研究では、脳MRIの網羅的形態解析により、装置間バイアスを補正可能な、汎用性の高い小児脳形態の性別・年齢毎の基準値を創出し、巨脳症性疾患の予後に関連する画像バイオマーカーの探索を目指している。 令和4年度は、日米の多施設共同研究(千葉大学医学部病院、千葉大学教育学部、東京女子医科大学八千代医療センター、名古屋大学、ボストン小児病院)との共同研究を行い、846例の脳MRIを集積した。集積した3D-T1強調画像(GE社:3D-SPGR、Philips社:3D-IR-TFE、SIEMENS社:3D-MPRAGE)をDICOM形式からNIFI形式に変換するともに、匿名化を行った。NIFI形式の画像ファイルは、カナダマギル大学の開発したCIVETのプログラムを用いてVoxel-based morphometry由来の36項目を測定した。撮像機種間のバイアスについて、測定値を経験的ベイズ法に基づいたマルチアレイ数値変換(Combat-GAM法)で統合することにより克服した。日本人小児の脳構造の年齢別基準値と、撮像機種間の補正法を確立し、巨脳症性疾患などの疾患脳の評価における有用性を検討した。今後は、巨脳症の症例数を増やして検討するとともに、出生コホート症例についても脳MRI撮影を行い巨脳症に関連する遺伝子バリアントが脳形態に与える影響についても検索する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日米5施設の多施設共同研究により、6歳以上18歳未満の正常発達児の3D-T1強調画像847画像を集積した。正常対照小児例は、頭痛や発熱の精査で撮影された例を対象とし、発達遅滞やてんかんの合併例は除外した。CIVETのプログラムを用いてVoxel-based morphometryによる脳定量解析で解析した。解析に成功した846画像について、各画像の36領域の脳体積を算出した。MRI撮像機種間のバイアスの発生に対して、各領域の測定値を年齢と性別を共変量として経験的ベイズ法に基づいたHarmonization(ComBat-GAM法)で統合を行った。Harmonization後の測定値をもとにして年齢・性別毎の平均値と標準偏差を創出した。性別毎の年齢は、男性 (N=339) 11.7±3.3歳、女性 (N=507) 12.8±3.4歳だった。代表的な脳容量は、全脳、男性1902±163 cm3、女性1747±138 cm3;皮質灰白質、男性778±71 cm3、女性692±80 cm3;白質;男性481±62 cm3、女性432±51 cm3;皮質下灰白質、男性38±3 cm3、女性36±3cm3;髄液腔、男性419±90 cm3、女性416±83 cm3;小脳・脳幹 男性185±15 cm3、女性170±14 cm3であった。さらに作成した基準値を元に巨脳症などの疾患を評価し、各症例について脳容量変化の特徴についてスパイダーチャートで示した。以上の解析結果に基づき論文投稿を進めている。このように順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
正常発達の正常対照小児例の脳MRI画像の解析及びHarmonizationの結果を元に、各領域毎の脳容量を分布図を作成し、“小児脳形態の基準値データベース“について作成した。今後は、巨脳症-毛細血管奇形症候群、Gorlin症候群、Sotos症候群などの巨脳症疾患の脳MRIを集積し、Combat-GAM法を用いてMRI機種の補正係数を用いて、脳の各領域毎の容量をZ-socreで評価し、巨脳症疾患群における各疾患毎の脳形態の特徴を明らかにする。 また、疾患の予後予測のためのバイオマーカーを確立する上で、疾患の有無や年齢・性別と同様に、周産期因子や母体因子などの環境因子が、脳形態に影響するかを把握することも必要である。そのため、出生コホート研究との共同研究により正常脳MRIを前方視的に集積している。令和5年度は、これらの取りくみを通して、巨脳症性疾患の予後予測のバイオマーカーの探索を行う。また、巨脳症疾患では甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンなど、内分泌的な異常を伴うこともあるため、巨脳症を伴わない小児内分泌疾患についても、同様の手順で解析を行う。既に臨床的目的で撮像したMRI画像は集積されているため、新たな追加撮影をせずに解析が可能である。
|