研究課題/領域番号 |
21K07720
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
雨宮 史織 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (90631135)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | fMRI / BOLD / hemodyanmic / perfusion / resting-state network / 神経血管連関 / 脳血流 / 灌流画像法 |
研究開始時の研究の概要 |
巨視的神経回路の動態解析法を確立し、高次脳機能障害の新規バイオマーカーを創生することを主目的とする。functional magnetic resonance imaging (fMRI)による神経活動動態解析には詳細な血行動態評価が必要となるため、同時にfMRIを利用した非侵襲性動静脈分離灌流画像法を確立する。これまでの一連の研究結果に基づき、①神経血管連関を考慮したfMRIによる新規神経ネットワーク動態解析法開発を試みる。これにより②汎用性の高い脳疾患バイオマーカーを得る事、および③脳機能的結合の機序につき新規知見を得る事を目指す。
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研究実績の概要 |
これまでの研究に引き続き、巨視的神経回路の情報動態解析法開発を目指し、安静時fMRIの全脳性信号および局在性信号の動態解析を行った。具体的にはヒト安静時fMRIにおける全脳性の信号とresting state networks(RSNs)と呼ばれる大域的ネットワークのそれぞれの信号の成因と信号時間差の由来を調べるため、実験1:健常者データに時間的独立成分分析を応用することで、複数の広汎性信号の分離を行い、広汎性およびネットワーク局在性成分それぞれのblood oxygenation level dependent (BOLD)信号を得た。実験2:広域視覚刺激装置を作成し、健常被検者における同期性神経活動に由来する広域信号を計測した。また同一被検者から安静時fMRIデータも取得し、頭蓋外動脈信号と広汎性信号の関係も調べた。これらのデータの比較から、BOLD信号時間差の空間分布が①刺激誘発性神経活動、②自発性神経活動、③その他の生理現象のいずれであっても高度に一致することを示した。これよりBOLD信号時間差が神経由来か否かに依らず、刺激・トリガーの時間差ではなく血行動態応答関数の違いを表していること、全脳広汎性信号が、頭蓋内外広域でほぼ同期した生理的な血流・血圧変化を反映する可能性が高いことを明らかにした。引き続き血行動態とBOLD信号の関連の詳細を検討するため、arterial spin labeling法(ASL)およびsingle photon emission tomography(SPECT)を用いた脳血流、血行動態指標との比較を試みた。SPECTと比較したASL法およびfMRIの計測特性や再現性を脳血管障害患者の術前後に計測したデータにて確認し報告した。また全脳性信号時間差の変動とRSNsの関係についても解析を行い報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト安静時fMRIにおける全脳広汎性信号と大域的ネットワーク信号のそれぞれの成因と信号時間差の由来を調べるため、安静時fMRIおよび広域視覚刺激時の広汎性信号を得て時空間パターンを比較した。頭蓋外動脈信号と全脳広汎性信号の関係も調べた。これらの比較から安静時fMRI BOLD信号の時間差が、神経性か否かに依らず刺激・トリガーに由来する時間差に由来するのではなく、局所の血行動態応答関数の違いを表していること、全脳広汎性信号が、頭蓋内外広域でほぼ同期した生理的な血流・血圧変化等を反映する可能性が高いことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
広域かつ高空間分解能のin vivo神経活動計測を可能とする安静時fMRIは、巨視的神経回路の情報動態解析から、脳高次機能の生理・病理の理解を目指す上で重要な情報をもたらことが期待されている。しかしながらfMRIは神経血管連動を介した間接的計測であり、特に自発性神経活動をターゲットとする安静時fMRIでは信号成分の由来の確認なしには正確な解釈が困難になる。本研究では安静時fMRI信号の時間差解析から広汎性信号成分、局所ネットワーク成分の由来の確認を進めた。結果は非神経性由来の信号分離による、より正確な神経活動計測法開発のための基礎となるものと考えられる。
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