研究課題/領域番号 |
21K07749
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 良 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90794008)
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研究分担者 |
石田 秀和 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50467552)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 拡張型心筋症 / 心筋線維芽細胞 / 心筋細胞 / RNA-seq / iPS細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
拡張型心筋症は心臓移植の適応となる疾患で中では最も頻度の高い進行性の難病であり、これまでいくつかの遺伝子異常が原因として報告されている。しかし、その原因が分からない場合も多い。心臓を構成するのは心筋細胞だけではなく、過半数は心筋線維芽細胞を代表とする心筋の支持細胞である。しかし、この心筋線維芽細胞が拡張型心筋症においてどのような役割を果たしているかは明らかではない。本研究では、本学倫理委員会承認のもと、拡張型心筋症の患者さんから同意を得て、検査や手術の際に採取した心筋線維芽細胞やiPS細胞を用いて、心筋線維芽細胞がどのように拡張型心筋症の発症に関わっているかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
小児拡張型心筋症の患者において、補助人工心臓装着時あるいは心臓移植時に心筋組織を採取し、そこから心筋線維芽細胞の培養を行った。この心筋線維芽細胞の初代培養細胞と、健常人由来心筋線維芽細胞を使用して実験を行った。 まず、細胞の基本的機能である細胞増殖能・遊走能・接着能については、拡張型心筋症の心筋線維芽細胞は健常と比較して有意な変化は認めなかった。さらに、細胞アポトーシスやミトコンドリア機能についても差を認めなかった。次に、健常な心筋細胞と共培養を行うと、拡張型心筋症心筋線維芽細胞と共培養した心筋細胞では、収縮能および拡張能が増悪することが明らかとなった。拡張型心筋症心筋線維芽細胞では、遺伝子発現パターンが健常の心筋線維芽細胞とは大きく異なっており、様々な液性因子や接着因子の発現変化によって、心筋線維芽細胞が主体的に心筋細胞の機能を障害することが明らかとなった。パスウェイ解析により、細胞外マトリクスの発現変化と接着因子のシグナル経路の異常、さらにHippo pathwayやTGFβの経路が拡張型心筋症の心筋線維芽細胞では有意に変化していることが明らかとなった。 この拡張型心筋症心筋線維芽細胞の集団の中に、特に発現パターンの異なっているsub-populationが存在するのかどうかを明らかにするために、single cell RNA-seq解析を行ったが、明らかに病態形成に関わるような発現パターンを示すsub-populationは同定できなかった。現在、論文を投稿し、査読者の要望に応じて追加実験を施行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、拡張型心筋症心筋線維芽細胞の細胞生物学的な特徴についての解析を行い、様々な結果を得た。現在、論文にまとめてすでに投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、心筋線維芽細胞から健常の心筋細胞に液性あるいは直接接触もしくは細胞外マトリクスを介して、その収縮および拡張に悪影響を与えることが明らかとなった。RNA-seq解析により、いくつかの候補となるシグナル経路および遺伝子が明らかとなっている。これらが拡張型心筋症の病態形成において果たす役割をさらに詳細に明らかにし、また、これらのシグナル経路の抑制が、拡張型心筋症の病態進行を防ぐ作用があるのかどうかを、今後さらに検証していく。
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