研究課題/領域番号 |
21K07755
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山下 竜幸 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (30571038)
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研究分担者 |
王 飛霏 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (10629033)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 臍帯 / 細胞外小胞 / EVs / MSC / 硫酸化糖脂質 / サルファタイド / exosome / 細胞外分泌小胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、まず臍帯から単離した間葉系幹細胞(MSC)を、ある物質で刺激、または無刺激で培養し、その培養上清から細胞外分泌小胞(EVs)をそれぞれ精製する。得られたEVsを新生児低酸素虚血性脳症(HIE)モデルマウスに投与し、その脳組織に含まれる細胞や神経ネットワークの状態を免疫染色等で比較することにより、治療効果の詳細を検証する。さらに治療効果に関わるEVs含有分子を同定するために各EVsをマススペクトロメトリーやRNA定量解析により比較検証する。候補分子が同定された場合、マウス脳由来神経幹細胞(NSC)に投与し、その効果を比較検討することで、作用メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
これまでの研究で新生児低酸素虚血性脳症(HIE)モデルマウスに対し、臍帯MSCをサルファタイドで刺激培養することで得られるEVs(sul(+)EVs)が有意に運動機能回復効果をもたらすこと、マウス脳由来神経幹細胞の神経分化誘導を促進することが判明したが、その作用機序は不明なままであった。。昨年度までの研究で、TGF-βファミリーのサイトカインであるGDF-15や神経分化誘導に関わるマイクロRNAであるmiR-17、miR-106bがsul(+)EVsに著しく濃縮されていることが判明し、今年度の研究でさらに、sul(+)EVs膜表面のPhosphatidyl Serine(PS)発現が増加していることを突き止めた。GDF-15は別名マクロファージ/ミクログリア阻害サイトカイン-1(MIC-1)として知られており、また、PSはマクロファージ/ミクログリアのターゲッティング分子として知られていることからsul(+)EVsがHIEモデルマウスの脳損傷部位に集積する炎症性ミクログリアを抑制することで症状の改善をもたらしているのではないかと考えた。そこで申請者はマウス脳から単離したミクログリア初代培養細胞にsul(+)EVsを投与したところ、LPS(リポポリサッカライド)で刺激した炎症性ミクログリアに対する抗炎症作用が確認できた。これらの結果を合わせるとsul(+)EVsは神経分化誘導効果と炎症性ミクログリアの抑制の両作用によりHIEモデルマウスの症状改善をもたらしていると考えられる。 ここまでの内容を2024年3月に開催された第23回日本再生医療学会総会にて発表した。また、これらの内容を発明名称「細胞外小胞集団の製造方法及び細胞外小胞集団」として2022年4月14日に国内特許出願し、2023年4月14日に国際特許移行出願した(PCT/JP2023/015157)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度までの研究でサルファタイドで刺激培養した臍帯NSC由来EVsの新生児低酸素虚血性脳症(HIE)モデルマウスに対する治療効果、作用機序が明らかになってきた。申請者はここまでの内容で論文を執筆することにしたが、その時間と予算を確保する必要があったため、当初予定していた2023年度までの研究期間を1年間延長していただいた。2024年度の早い時期に論文を完成させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は論文を執筆しつつ、今回の研究で分かった硫酸化糖脂質サルファタイドで刺激培養することで起こるEVsの変化がどのような分子メカニズムで起こるのかにフォーカスを充てた新たな研究に取り掛かりたいと考えている。実際臍帯MSC以外の細胞をサルファタイド刺激することでGDF-15がEVsに濃縮されるかを調べたところ、白血病由来細胞株K562でもその効果が認められ、この反応は多くの細胞に共通して起こる重要な反応であることが分かってきた。K562におけるこの反応は、がん細胞がマクロファージの攻撃を免れるためのメカニズムの一つである可能性があり、これらのメカニズムを明らかにすることで、新たながん治療法の開発にも期待がかかる。
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