研究実績の概要 |
これまで培養ディッシュ内で蠕動様運動、吸収や分泌能などのヒト腸管の機能を有する立体組織(ミニ小腸)の創成に世界で初めて成功した。この技術を基盤として、小腸幹細胞(LGR5-EGFP)と腸管神経叢の成熟化(PHOX2B-RFP)を同時に可視化できるミニ小腸に作製に成功した。本研究では、マクロファージ内在化ミニ小腸(M-ミニ小腸)へリンパ球前駆細胞を導入することでマクロファージとリンパ球を内在化したミニ小腸(M/L-ミニ小腸)の作製を確実に実施できる系を構築した。さらに、M-ミニ小腸に対して炎症惹起モデルとして汎用されている腸内細菌由来リポポリサッカライド(LPS)の反応性を検証するため、LPSの腸管粘膜上皮側の受容体となるToll様受容体(TLR)の発現動態を解析した。腸管内組織マクロファージの極性マーカーであるCD68, CD86, CD163, CCL2, SOCS3, STAT6, IL6とIL10についてTGFβ受容体1の選択的阻害剤であるSB431542を添加したM-ミニ小腸も加え解析した。その結果、M-ミニ小腸ではミニ小腸(マクロファージ無)と比較しCD86, CD163, CCL2, SOCS3, STAT6やIL6で高い発現が認められた。TLRの中でもLPSの受容体となるTLR4の発現は認められるものの非常に弱い発現で生体小腸と同様であることが免疫染色上でも確認できた。これらより、M-ミニ小腸は粘膜上皮バリア性破綻・炎症惹起モデルとなり新生児難治性腸炎発症機序の開発を進める有望なバイオモデルであることが強く示唆された。
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