研究課題/領域番号 |
21K07783
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
|
研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
岩山 秀之 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00757726)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | MCT8異常症 / 早期診断 / 新薬 / 臨床試験 / Triac / DITPA / 胎児治療 / 患者会 / reverse T3 / 遺伝子治療 / Crispr/Cas9 |
研究開始時の研究の概要 |
MCT8異常症は、甲状腺ホルモンの細胞膜輸送蛋白であるMCT8に異常を来し、発語も独 歩も獲得できない最重度の脳障害を呈する。現在、早期診断法、治療法は確立されておらず、分子病態を基盤とした早期診断法および治療法の開発が必要である。また、本邦を含めて大規模解析はなされておらず、発症頻度も不明である。本研究では、1)新生児期の早期診断法の開発、2)発症頻度の解明、3)脳障害モデル動物を用いた遺伝子治療の開発を目的とする。脳障害が出現する前に診断できる早期診断法、最も重要な症状である脳障害を改善する治療法、医療経済への影響を検討するのに必要な発症頻度を確立することを目指す。
|
研究実績の概要 |
遺伝性甲状腺疾患であるMCT8異常症は重度の発達遅滞を来す。早期診断法や治療法は確立していない。本研究の目的はrT3測定による早期診断法の確立と、欧州で治療効果が報告された新薬(Triac)の国内での実用化を目指すとともに海外のグループと国際研究や患者会・レジストリの構築を行うことである。 早期診断法の開発は、昨年度から引き続き香港のグループ(主任研究者 Rachel Yiu)と国際共同研究を行った。香港の新規患者のrT3を含む甲状腺機能検査を行い、異なる日齢での採血(日齢1 vs 日齢4-5)、異なる濾紙血(香港 vs 日本)を比較し、結果を論文化した。 新薬の国内での実用化はMCT8異常症の新薬(甲状腺ホルモンアナログ・Triac)の国内での実用化に向けて、日本での開発・販売権を取得した藤本製薬の担当者と協議を開始した。臨床試験の実施に向けて順調である。 MCT8異常症の新薬による胎児治療はアメリカのグループ(主任研究者 Weiss R)とMCT8異常症の新薬(甲状腺ホルモンアナログ・DITPA)による胎児治療の国際共同研究を行っている。MCT8欠損症と診断された第1子を持つ母親が一卵性双胎を妊娠し、胎児診断でいずれもMCT8欠損症と診断された。宗教上の問題で中絶を選択せず、妊娠を継続することとなった。妊娠母体にDITPAを内服させ、臍帯から採血することで胎児の血液を採取しDITPAによる胎児治療を試みた。当研究室では胎児および母体の血液中の甲状腺機能および薬物濃度をLC-MSMSを用いて測定した。結果については特許取得と関連する可能性があり、結果の記載を控える。 患者会・レジストリの構築は2024年4月に患者会の設立が実施できた。レジストリの構築は、当班会議の難病プラットフォームの登録システムを利用する方針で小児内分泌学会とも調整していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早期診断法の開発は、香港の新生児スクリーニングで使用される濾紙を用いて、日齢1(図1a)、1歳時(図1b)の患者と正常新生児の濾紙血(図1の黒丸、n=32)を収集し、LC-MS/MSでT3、rT3を測定した。結果、1歳時のT3低値、T3/rT3比高値、日齢1のrT3低値は既報と同様だったが、日齢1のT3/rT3比は正常新生児と同様で既報と異なっていた。結果を論文化できており順調に進展していると思われる。 新規治療薬の開発は、藤本製薬と治験グループの組織および治験計画についての協議を開始した。昨年度まで臨床試験が進まない背景には、MCT8異常症の患者数が少ないだけでなく、患者会およびレジストリ構築が不十分であることも影響していると考えられた。今年度は家族会の設立とともに、新薬の開発・販売権を取得した製薬企業も現れ、臨床試験の実施に向けて順調である。 DITPAによる胎児治療は研究の端緒についたばかりだが、今後、症例を蓄積し新たな知見を得られる可能性があり、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
将来的に研究が目指す方向として、本研究で開発を行っている早期診断法を用いて、新生児マススクリーニングで患児の疑いがある児を同定し遺伝子検査で確定診断を行う。確定診断された児にTriacやDITPAなどの新薬を投与し治療を試みる。また、胎児期に本疾患と診断された場合には、DITPAの母体への投与による胎児治療を行う。これらを推進するためには、国際研究を含む他研究機関との共同研究を発展させていくこと、担当省庁および製薬会社、患者会と連携し臨床試験を実施していくことが重要であるので、今までと同様にスピード感を持って研究に取り組んでいく。
|