研究課題/領域番号 |
21K07808
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
松島 小貴 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80451871)
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研究分担者 |
嶋田 洋太 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20560824)
小林 博司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90266619)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 遺伝子治療 / ライソゾーム病 / AAV / GM1ガングリオシドーシス / MPSII |
研究開始時の研究の概要 |
ライソゾーム蓄積症(LSD)は、ライソゾーム内の酵素欠損により糖脂質などが蓄積した結果、肝脾腫、骨変形、中枢神経障害などを引き起こす疾患群である。現在は酵素補充療法や造血細胞移植が施行されているが、継続的な治療が必要であること、補充した酵素は血液脳関門(BBB)を通過しないため中枢神経障害には効果がない。 近年、治療用酵素に特定の抗体を融合しBBBを通過させる試みが検討されている。本研究ではトランスフェリン受容体抗体と欠損酵素を融合し、中枢神経障害への遺伝子治療を行う。遺伝子導入方法としてはアデノ随伴ウイルスベクターを用い、疾患モデルマウスにおける治療効果を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、抗ヒトトランスフェリン受容体抗体(TfRAb)と疾患欠損酵素の融合タンパク質をAAVベクターにより疾患モデルマウスへ導入し、全身、特に脳における治療効果を解析することを目的としている。 これまでにレンチウイルスベクターに抗ヒトTfRAbと酵素の融合タンパク質発現単位を搭載し、ヒトTfRノックインマウスを用いた解析を進めており、脳における治療効果を確認している。しかし、ヒトTfRAbと酵素の融合タンパク質発現単位がAAV搭載可能長より長いため、ヒトTfRAbの単鎖化を進めるとともに、単鎖抗体化に成功している抗マウスTfRAbを用いた検討を行っている。2023年度は、2022年度に引き続きその抗マウスTfRAbとGM1ガングリオシドーシスの原因酵素であるβgalを融合したタンパク質を肝臓特異的に発現するAAVベクターを尾静脈注射し、疾患モデルマウスの治療効果を検討した。昨年度決定した至適ウイルス量における治療効果を確認したところ、長期に渡り血中および末梢臓器の酵素活性は維持されており、脳における原因物質の蓄積も正常化していた。また病理学的解析でも脳の広範囲において蓄積は確認されず、それに伴い中枢神経の炎症も改善されていた。さらに行動学的解析からも治療効果を認め、未治療では300日前後であったモデルマウスの寿命はほぼ正常と同等の700日まで延長した。以上の結果からi.v.で導入したAAVから発現するTfRAb融合酵素による脳の治療効果は高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗ヒトTfRAbの遺伝子長が長いため抗ヒトTfRAb融合酵素発現単位のAAVへの搭載が困難であり、当初の計画から変更せざるを得なかったが、疾患モデルマウスにおける治療効果が非常に高く、この結果はマウスのPOC獲得には十分なデータであると考える。①の抗ヒトTfRAb単抗体化に成功した暁には、今までの検討を踏まえてより簡便に解析ができると考えている。以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
抗ヒトTfRAb融合酵素発現単位のAAVへの搭載が困難であり、当初の計画から変更せざるを得なかったが、①抗ヒトTfRAbの単鎖抗体化を進めること、②単鎖抗体化が成功している抗マウスTfRAbを用いて検討を進めること、を目的として研究を行なっている。②の結果、治療効果が極めて高いことが明らかとなった。現在までに生化学的解析、行動学的解析、および病理学的解析、延命効果の検討が終了しており、今後は論文化を進めていく。
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