研究課題/領域番号 |
21K07939
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
北畑 富貴子 (河合富貴子 / 河合) 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (00755580)
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研究分担者 |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30372444)
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50451935)
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研究期間 (年度) |
2022-02-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 機械学習 / 癌微小環境 / 空間的多様性 / HBV integration / iPS細胞 / 肝細胞癌 / 人工知能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は癌微小環境の空間的多様性をゲノム情報と対応する病理組織において数理学的に明らかとし、網羅的癌ゲノム情報と臨床情報も含めた膨大なデータを機械学習を用いて統合的に解析する。癌微小環境の空間的多様性の数理データから体細胞変異頻度を明らかとし、臨床病態を予測するモデルを構築する。 さらに、本研究では人工知能から得られた知見をin vitroモデルを構築して解析する。病態形成に関わる後天的遺伝子変異群を導入したヒトiPS細胞由来肝細胞と微小環境を構成する各種細胞とを用いて多細胞オルガノイドを開発し、その表現型の解析から微小環境が関わる病態を形成する細胞連関の本質解明をめざす。
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研究実績の概要 |
本研究では、独自に確立してきた学術・技術基盤に基づき、以下の目的を設定した。(1) 肝癌ゲノム情報と癌微小環境の空間的多様性の機械学習による臨床予測モデルの構築、 (2) ヒトiPS細胞由来多細胞肝臓オルガノイドの開発と微小環境と病態形成に関わる細胞連関解析から肝癌の臨床病態を数理学的に予測かつ細胞生物学的に証明することを目的とし、今年度の実績として下記を得た。 (1) HBV陽性肝細胞癌についてHBV integration siteを集計し、患者毎のintegration site数は多くの症例で限定されたintegration siteのみ同定された。格子状に並んだ細胞が確率的に死滅・増殖を繰り返していく確率モデルを用いて実際に観測されたHBV DNA integration siteの分布を説明可能か検証した。空間構造の影響を考慮して格子モデルと混合モデルを作成して比較検討した。格子モデルでより多くのintegration siteが残存していたことに対し混合モデルでは1つのintegration siteを持つ細胞がモノクローナルに格子全体を占有していたことから空間構造がintegration siteの多様性を保つことに寄与することが示唆された。 (2)HBV integrationのみを有するiPS細胞と、上記1により解析された微小環境の空間的多様性と発癌に関連すると抽出された遺伝子変異群との形質の違いを解析する検討を進めた。今年度はゲノム編集により標的遺伝子を改変したヒトiPS細胞を用いて、発癌病態の一部を再現しうる肝疾患病態解析モデルを構築した。標的領域へHBVゲノムをknock inすることによって新規のヒトiPS細胞株を樹立、肝細胞系譜に誘導したところ、疾患モデル型細胞株では増殖能と細胞周期関連遺伝子群の発現が有意に高く、肝発癌病態の一部が再現された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画は(1) 肝癌ゲノム情報と癌微小環境の空間的多様性の機械学習による臨床予測モデルの構築、 (2) ヒトiPS細胞由来多細胞肝臓オルガノイドの開発と微小環境と病態形成に関わる細胞連関解析の2段階で進行させる計画であるが、現時点まで順調に進捗していると考えられる。 (1)肝癌ゲノム情報と癌微小環境の空間的多様性の機械学習による臨床予測モデルの構築については当初の計画通り進めることができた。すなわち、癌微小環境の空間的多様性のシミュレーションモデルが実際に観測されたHBV DNA integration siteの分布を説明することが可能か検証し、空間構造がintegration siteの多様性や増殖能に関わることが明らかになり、現在の解析を進めることでHBV感染の肝発癌機構予測の一端を解明し得ると考えられる。 (2)ヒトiPS細胞由来多細胞肝臓オルガノイドの開発と微小環境と病態形成に関わる細胞連関解析ついては標的領域へHBVゲノムをknock inすることによって新規のヒトiPS細胞株を樹立、肝細胞系譜に誘導したところ、疾患モデル型細胞株では増殖能と細胞周期関連遺伝子群の発現が有意に高く、肝発癌病態の一部が再現された(第58回日本肝臓学会総会、第29回肝細胞研究会にて発表)。現在論文査読中である。 以上のように、研究計画は順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
前項に記した各段階で研究を推進していく。 (1)肝癌ゲノム情報と癌微小環境の空間的多様性の機械学習による臨床予測モデルの構築:癌微小環境の空間的多様性のシミュレーションを引き続き行い、実際の病態との関連を評価していく。また、Whole slide imageから数値化した病理画像データとHBV integrationとの関連を機械学習を用いて解析し、得られた画像および遺伝子変異、HBV integration、臨床データから癌の生物学的悪性度を推定し、癌進展や治療抵抗性等の臨床病態を予測可能なアルゴリズムを構築することを目指す。 (2)ヒトiPS細胞由来多細胞肝臓オルガノイドの開発と微小環境と病態形成に関わる細胞連関解析:標的領域へHBVゲノムをknock inすることによって新規のヒトiPS細胞株を樹立、肝細胞系譜に誘導して、前駆細胞レベルでの増殖能を比較検討し、その分子機構の詳細を明らかにする。これらの結果に関して、上記1により解析された微小環境の空間的多様性と発癌に関連すると抽出された遺伝子変異群との形質の違いを解析する予定である。
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