研究課題/領域番号 |
21K07971
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
増田 清士 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00457318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | RNA結合蛋白質 / 食道扁平上皮癌 / TIA1 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、RNA結合蛋白質TIA1aが食道癌の進展を促進する分子機構の全容を解明し、これを標的とした特異性の高い新たな治療戦略開発を目指す。 TIA1aが食道癌特異的に高発現するメカニズムの解析や、 高発現したTIA1aの細胞内局在変化を制御する因子の同定を行い、TIA1aの食道癌特異的な発現・機能調節に関わる分子マップを完成する。さらに TIA1aを中心とした分子ネットワークを広範囲に制御する特異的介入法の検討を行い、TIA1aを標的とする治療が及ぼす効果を明らかにする。
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研究実績の概要 |
(1) TIA1遺伝子のスプライシングを制御する因子の同定 これまで癌の発生や進展に関与すると報告のあるスプライシング制御因子をリスト化し、siRNAを用いて各々をノックダウンした細胞でTIA1aとTIA1bの発現量をqPCRおよびウェスタンブロット法を用いて検討した。この結果、TIA1a型スプライシングを促進する蛋白質XとTIA1b型スプライシングを促進する蛋白質Yを同定した。また、TIA1遺伝子のexon 5領域を含むミニジーンで検討した結果、蛋白質Xノックダウン細胞でTIA1a型スプライシングが、蛋白質Yノックダウン細胞でTIA1b型スプライシングが確認された。さらに、蛋白質X特異的抗体を用いて免疫沈降した結果、TIA1 pre-mRNAとの結合が確認された。このことから、蛋白質XがTIA1遺伝子の癌促進型スプライシングを制御する因子であると考えられる。 (2) スプライシング制御因子の発現変動が癌細胞の悪性形質化に与える影響に関する検討 蛋白質Xまたは蛋白質Yノックダウン細胞を用いて検討を行った。蛋白質Xノックダウン細胞では細胞増殖が有意に抑制され、アポトーシスの亢進が確認された。また、スフェロイド形成も有意に抑制された。一方、蛋白質Yノックダウン細胞は予想に反して細胞増殖能の亢進が認められず、やや抑制される傾向が見られた。今後、遊走能や浸潤能について創傷治癒アッセイやボイデンチャンバー法を用いて検討する予定にしている。 以上の結果から、蛋白質XはTIA1遺伝子のスプライシングを癌促進型にスイッチし、TIA1a優位の発現とすることで癌の進展を促進する可能性が示唆された。また、蛋白質XがTIA1aの細胞内機能に対する特異的な介入点の一つであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた「TIA1aの発現制御制御機構の解明」として、TIA1a型スプライシングを誘導する蛋白質Xを特定した。また、蛋白質Xの発現変動により、食道癌細胞の増殖やアポトーシス誘導が変化することを明らかにすることができた。このことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度であり、(1) TIA1aの機能制御点の同定と特異的な介入法の決定と、(2) 介入法の臨床意義、有効性の検証と副作用予測を予定している。 (1) これまでの結果からTIA1aの癌促進機能を制御する候補点を絞り込み、有効な介入法を検討する。介入法の検索は、TIA1a安定強発現細胞株を用いたTIA1aの細胞内局在解析または細胞増殖能解析を用いる。現時点では、介入法の候補としてエクソンスキップ、特異的siRNA、キナーゼ阻害、相互作用するmRNAの作用部位修飾、機能モジュールのハブとなる因子の阻害に加え、ヒンジ領域配列を含む合成ペプチドによる細胞内局在調節性相互作用因子の阻害やスポンジ因子によるTIA1aトラップを予定している。 (2) これまでの検討で得られた結果について公共データベースを用いて、TIA1aと標的分子候補の発現量や分布、変異の有無の相関を調べ、臨床病理学的因子との関連を検討する。また、必要があればESCC臨床検体を用いた免疫組織染色やリアルタイムPCR、次世代シーケンス解析を行う。
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