研究課題
基盤研究(C)
本研究は、RNA結合蛋白質TIA1aが食道癌の進展を促進する分子機構の全容を解明し、これを標的とした特異性の高い新たな治療戦略開発を目指す。 TIA1aが食道癌特異的に高発現するメカニズムの解析や、 高発現したTIA1aの細胞内局在変化を制御する因子の同定を行い、TIA1aの食道癌特異的な発現・機能調節に関わる分子マップを完成する。さらに TIA1aを中心とした分子ネットワークを広範囲に制御する特異的介入法の検討を行い、TIA1aを標的とする治療が及ぼす効果を明らかにする。
食道扁平上皮癌(ESCC)でTIA1遺伝子のスプライシング制御機構とTIA1aのリン酸化制御因子に着目した。複数のリン酸化キナーゼを予測し、TIA1aの細胞内局在を制御するキナーゼ(kinase2)を同定した。また、TIA1a型スプライシングを誘導する因子(SF-X)を同定した。同定した因子に対する特異的siRNAや阻害剤はESCC細胞の増殖を抑制した。RNA-seqデータ解析から、ESCC組織でTIA1a、kinase2、SF-X量が増加していること、TIA1a量とkinase2量、SF-X量に正の相関があることが確認された。以上から、これらはESCCの新たな治療標的となることが示唆された。
RBPは正常細胞でも様々な生理機能を担っており、発現量制御に着目した従来の治療戦略では重大な副作用が予測される。本研究の成果をモデルに、RBPが癌細胞の悪性形質獲得のために必要な機能モジュール群のみを調節する分子機構の全貌を解明し、これを可逆的にON/OFFすることでこの機能モジュール全体を特異的に調節できれば、有効な分子標的治療薬の少ないESCCにおいて、腫瘍や特定の悪性形質に選択性が高い治療法開発が可能になる。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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