研究課題/領域番号 |
21K08002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
工藤 洋太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90608358)
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研究分担者 |
中川 勇人 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (00555609)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | アラジール症候群(ALGS) / 非典型型Protein Kinase C / 肝内胆管形成不全 / アラジール症候群 / 非典型Protein Kinase C分子 / 肝内胆管 / 非典型PKC |
研究開始時の研究の概要 |
肝特異的に非典型PKC分子のPKCλ/ιとPKCζを同時に欠損したマウスは肝内胆管の形成不全を呈する。従来の同様のモデルマウスとは異なりNotchシグナル活性を保つこのマウスをもちいて両分子による肝内胆管形成、肝内胆管の再生、肝内胆管がんの発生・進展の新しい制御機構を明らかにする。胆管オルガノイドをもちいた網羅的遺伝子発現解析とプロテオミクス解析により表現型を説明しうる責任遺伝子群を探索、同定する。非典型PKC分子とエフェクター因子との分子相互作用については、直接的な結合の確認に加えて、リン酸化基質の可能性についても検討を加え、分子学的機序を明らかにする。
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研究実績の概要 |
アラジール症候群(ALGS、指定難病297)は多臓器に影響を及ぼす先天性疾患であり、肝内胆管形成不全という特徴的な肝病変を伴います。遺伝子レベルでは、ほとんどの症例でJAG1遺伝子、少数でNOTCH2遺伝子の変異が見られますが、これだけでは症状の個人差を十分に説明できません。研究では、Alb-CreマウスとPrkcif/f;Prkczf/fマウスを交配し、非典型型Protein Kinase C(aPKCs)の両遺伝子欠損(DKO)マウスを作成、このマウスがALGSの肝病変を再現することを明らかにしました。これにより、肝病変においてaPKCsが重要な役割を果たしていることが示唆されています。
DKOマウスの観察から、胆汁うっ滞を伴う肝障害、胆汁酸の調整異常、肝臓の大型化など、肝病変の進行を示す多くの表現型が観察されました。さらに、胆管の欠如が肝臓内で確認され、これは肝内胆汁うっ滞に繋がると考えられます。興味深いことに、DKOマウスの肝組織ではNotchシグナリングが抑制されていないことから、胆管形成における新しい制御機構の可能性が示唆されました。RNAシーケンス分析により、肝臓の遺伝子発現における顕著な違いが明らかになりました。特に、胆汁うっ滞への補償反応としてOatp1遺伝子の発現増加が見られました。
本研究から、非典型型Protein Kinase C分子の欠損がALGSの肝病変における重要な修飾因子であることが示唆され、肝病変の治療法開発に向けた新たな一歩となります。今後の課題として、これらの知見をALGS患者の治療にどのように活用できるかを検討する必要があります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究プロジェクトの進行に遅れが生じている主な要因は、医師としての臨床業務が非常に多忙を極めたことにあります。特に、私の役職が病院業務に専念する必要性が生じたため、研究への貢献度が一定期間低下いたしました。加えて、実験に不可欠な試薬の調達にも予期せぬ遅延があり、これがさらなる時間のロスとなりました。これらの状況が重なり、計画された研究スケジュールを維持することが困難となりました。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、胆管オルガノイドの確立と解析を予定通り進めます。前回の検討で発現遺伝子群が不安定だったため、安定継代・維持が困難であったオルガノイドの改善を図ります。これには、オルガノイドの培養条件を最適化し、また野生型との比較分析を通じて、欠損遺伝子群の機能的役割を明らかにすることが含まれます。同時に、胎生期の肝内胆管発生異常に注目し、発生初期段階からの障害されているプロセスを詳細に解析することで、胆管形成障害の起点となるメカニズムを特定します。実験プランとしては、時間系列に沿った詳細な組織学的および分子生物学的解析を実施し、障害の進行パターンを明確にします。これにより、肝臓疾患の治療戦略の開発につながる洞察を得ることを目指します。
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