研究課題
基盤研究(C)
最近、我々は、B型慢性肝炎において、細胞傷害性T細胞(CTL)優位の肝障害とNK細胞優位の肝障害が存在することを見出した。しかしながら、生体内でどのようにしてこの2種類の肝障害が選択・制御されているかについては不明であり、この機序を解明することで、よりB型慢性肝炎の病態制御に貢献できると考え、本研究を立案した。本研究では、これまで行ってきたHBV感染ヒト肝細胞内の遺伝子発現解析から生体内の免疫制御に関与する遺伝子を同定し、さらに、同定した標的遺伝子の発現を制御することで、CTL・NK細胞による肝障害の選択的な制御を行い、肝炎発症メカニズムの解明につなげる。
マウス肝細胞の90%以上がヒト肝細胞に置換されたヒト肝細胞キメラマウス(以下、キメラマウス)に対し、B型肝炎ウイルス(HBV)genotype Cキャリアから採取した血清を接種し、HBV持続感染キメラマウスを作製。非感染マウス、感染3日後、10日後、5週間後、8週後、32週後にマウス肝組織より採取したヒト肝細胞を用いて、ヒト肝細胞内の遺伝子発現を次世代シークエンサーにて解析。HBV感染後、マウス血中のHBV DNA量は感染6~8週目にプラトーに達することから、非感染マウスの肝組織とHBV感染8週後のマウス肝組織における遺伝子発現の相違を検討したところ、両マウス群間で有意に発現が変化し、かつ2倍以上の発現変化を認めた遺伝子が225遺伝子抽出された。これらの遺伝子からmicroRNAやpseudo geneを除き、196遺伝子を抽出した。本研究では、HBV感染に伴う生体内のリンパ球への影響を解析することが目的であることから、抽出された遺伝子の情報を検索し、膜蛋白とされる28遺伝子、分泌蛋白とされる37遺伝子に解析対象を絞り込んだ。さらに、次世代シークエンス解析結果の再現性を確認するため、各time pointで回収したマウス肝組織より再度mRNAを抽出し、real time PCRを実施した。その結果、約70%の遺伝子において再現性が確認された。そこで、再現性が確認された遺伝子の機能について情報収集を行い、NK細胞や細胞傷害性T細胞の活性化に関与することが推定される遺伝子に解析対象を絞り、機能解析を開始した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は研究実施施設の移動があり、実験室の整備に時間を要したが、今年度は、実験室の整備も進み、概ね計画通り進んだ。ただ、これまでと機器が変更となったため、測定条件の変更が必要となり、プロトコールの調整に時間を要した。
real time PCRにより次世代シークエンスデータの再現性が確認された遺伝子が多数存在したため、その中から、CTLやNK細胞のHBV認識・活性化への関与が推定される遺伝子を抽出し機能解析を継続して行う予定である。抽出した遺伝子の中にはHBV感染との報告がない遺伝子が多く含まれているため、HBV感染細胞における抽出遺伝子の役割を解析する。一方、分泌蛋白も多く含まれていることから、健常人やHBVキャリアから採取した末梢血単核球(PBMC)をHBV感染細胞・非感染細胞と共培養することにより、CTLやNK細胞がどのような反応を示すかについて、in vitroにて評価する。抽出された分子(recombinant proteinなど)を添加し、PBMCと培養することで、CTL、NK細胞活性化の有無をFACSや細胞の免疫染色を用いて評価する予定である。
すべて 2023 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 4件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Journal of Gastroenterology
巻: 58 号: 3 ページ: 292-293
10.1007/s00535-023-01962-3
Clinical Journal of Gastroenterology
巻: 16 ページ: 250-253
10.1007/s12328-023-01760-7
Hepatology Research
巻: 53 号: 3 ページ: 196-207
10.1111/hepr.13851
PLOS Pathogens
巻: 18 号: 3 ページ: 1-26
10.1371/journal.ppat.1009983
The Journal of Infectious Diseases
巻: 227 号: 5 ページ: 686-695
10.1093/infdis/jiac044
Journal of Infection
巻: 84 号: 3 ページ: 391-399
10.1016/j.jinf.2021.12.025
PLOS ONE
巻: 17 号: 2 ページ: e0263844-e0263844
10.1371/journal.pone.0263844
Liver International
巻: 41 号: 12 ページ: 2836-2848
10.1111/liv.15065
Viruses
巻: 13 号: 10 ページ: 1920-1920
10.3390/v13101920
Journal of Viral Hepatitis
巻: 28 号: 9 ページ: 1304-1311
10.1111/jvh.13557
Journal of Virology
巻: 「-」 号: 15
10.1128/jvi.00767-21
巻: 95 号: 14
10.1128/jvi.00492-20
BMC Gastroenterol.
巻: 21(1) 号: 1 ページ: 306-306
10.1186/s12876-021-01884-5
Medical Science Digest
巻: 47 ページ: 43-46