研究課題/領域番号 |
21K08010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
松本 昂 大分大学, 医学部, 助教 (50609667)
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研究分担者 |
塚本 善之 大分大学, 医学部, 助教 (00433053)
山岡 吉生 大分大学, 医学部, 教授 (00544248)
赤田 純子 大分大学, 医学部, 助教 (30346548)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ピロリ菌感染症 / 次世代シーケンス / 胃癌 / 胃オルガノイド / RNA-Seq / メタボロミクス / ピロリ菌未感染胃癌 / 16S rRNAメタゲノム解析 / オルガノイド |
研究開始時の研究の概要 |
ピロリ菌は、胃癌をはじめとする消化器疾患を引き起こす。しかし、実際には、ピロリ菌感染者の数%しか胃癌を発症せず、生涯を通じて殆ど症状が現れない不顕性感染例も多く存在する。また、本邦では、すべてのピロリ菌感染胃炎患者に対する除菌治療が保険収載となって以降、全国的な除菌治療が実施されているにも関わらず、未だに、胃癌は、本邦における部位別がん死亡率の上位である。即ち、ピロリ菌除菌=胃癌発生ゼロではなく、ピロリ菌感染以外にも発がんに関与する因子が存在することが伺える。そこで本研究では、トランスオミクス解析という新たなアプローチにより、胃癌発症機序およびピロリ菌未感染胃癌の解明に挑む。
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研究実績の概要 |
ピロリ菌感染症および関連疾患と胃細菌叢との関連性を明らかにするため、モンゴルを含むアジア地域から収集された胃粘膜上皮生検におけるマイクロバイオーム解析を実施した。特に、モンゴルにおいて確認された、ピロリ菌未感染胃癌患者におけるEnterococcus(Ent)の増殖が原因と考えられるdysbiosisの原因を探るため、本菌を分離培養し、次世代シーケンスにより全ゲノム配列決定し、主要病原因子について検索した。ピロリ菌の新たな病原因子の検索に向け、ピロリ菌株のメタボローム解析およびRNA Seqを実施し、現在解析中である。また、Entまたはピロリ菌感染による新たな発がん機序を探るため、AGS細胞株、さらに、昨年度までに樹立した幽門部上皮細胞由来の胃オルガノイドを用いて感染実験を実施した。Entまたはピロリ菌感染に起因するゲノムの不安定性を評価するため、Comet AssayによるDNA二本鎖切断(double-strand break: DSB)の観察、加えて、WBによりDSBの特徴であるリン酸化H2AX発現を評価した。Entおよびピロリ菌感染に伴う細胞の形態学的変化、ROS産生、DSBを確認することができた。次に、トランスウェルを用いて、菌と細胞との接着を遮断し、この病原因子が接着に起因するものかどうかを評価した。その結果、ピロリ菌では、細胞接着によってのみDSBが確認され、一方、Entは、細胞上清中に分泌される細胞外毒素がDSBに関与していることが明らかとなった。加えて、感染時における2次元幽門部胃オルガノイドの組織学的変化をHE染色、MUC5ACおよびMUC6の局在、さらに、30K遺伝子をターゲットにしたmRNAマイクロアレイを実施した。 上記研究成果をまとめ、2023年5月に米国で開催されるDigestive Disease Week 2023にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各国の胃マイクロバイオーム解析について当初計画通り進捗しており、現在、解析データをまとめている。ピロリ菌およびEntの全ゲノム配列も決定されており、主要病原因子を検索・評価できている。加えて、予備試験的にピロリ菌の病原因子欠損株におけるRNA-SeqやCapillary Electrophoresis Fourier Transform Mass Spectrometry(CE-FTMS)を用いたメタボローム解析を実施しており、新たな研究シーズの発掘も期待できる。 in vitro実験系においても、AGS細胞株(胃腺がん)およびMKN45(低分化型腺がん由来)、MKN28 およびMKN74細胞株(中分化型腺がん由来)の複数の細胞株を用いて、感染時のROS産生やDSBの条件検討が完了し、評価系が確立できており、2次元幽門部胃オルガノイドを用いた組織学的評価も実施可能である。加えて、胃オルガノイドにおける感染時のインフラマソームの挙動を評価するため、mRNAマイクロアレイを実施しており、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ピロリ菌およびEntによる共感染モデルによるDSB誘導に関する研究成果をまとめ、学術雑誌への投稿準備を進める。ピロリ菌のゲノム解析から明らかになった病原遺伝子Aについて、遺伝子欠損株を作成し、RNA-Seq解析を実施した。これら結果から、本病原因子がピロリ菌のトランスクリプトームへ与える影響について明らかにする予定である。また、本菌のメタボローム解析について一定の解析結果が得られているものの、安定的な代謝物質の回収プロトコルの確立、より目的の代謝物質のターゲットを絞ったCE-TOFMSによる解析を中心にn数を確保し、データを補完する必要がある。一方、胃オルガノイドにおけるメタボローム解析に向けて、マトリゲルの存在を考慮した、条件検討が必要であるが、RNA-Seqによる解析法が確立できれば、代替案として検討する予定である。
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