研究課題
基盤研究(C)
慢性肝疾患患者に合併するサルコペニアは,慢性肝炎患者の約30%,肝硬変患者の約40%に認められる.NAFLDは過栄養の病態でありながら,骨格筋維持においては栄養障害の状態を呈するという2面性があり,サルコペニアの合併において独自の機序が想定されているが未解明である.本研究は,NAFLD患者に合併するサルコペニアの発症機序を肝臓の脂肪化,線維化,門脈圧亢進,胆汁酸組成変化の観点より解明するものである.本研究で得られた知見よりNAFLD疾患の予後やQOLの改善のみならず,治療法の開発へ展開しうる.
NAFLD疾患の場合,線維化が軽度であっても門脈圧亢進症状がおこりうるため,肝臓の線維化程度と門脈圧亢進症を非侵襲的に測定しうるMRエラストグラフィを用いることで同時に,非侵襲的に評価をすることが可能である.非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD)は2023年に正式にMetabolic dysfunction-associated steatotic liver disease(MASLD)と名称が変更された.2024年1月に405例のMASLD患者の肝硬度(LSM)および、経時的なLSMの変化(ΔLSM)がMASLD患者の臨床イベントを予測できるか検討を行い、その結果をJournal of Gastroenterology誌に投稿した.平均追跡期間は72.6ヵ月、MREの平均間隔は23.5ヵ月、肝硬度進行例は52例(12.8%)、非進行例は353例(87.2%)であった。初回LSMは、肝硬変、肝細胞癌(HCC)、肝臓関連イベント、肝外悪性腫瘍、および全死亡の累積確率と有意に関連していたが、心血管疾患とは関連していなかった。初発LSMが低い(線維化ステージ0-2)例においても、経時的肝硬度進行例では肝関連イベントのリスクが高値となった。初回LSMとΔLSMは、初回LSMが低い場合でも、MASLD患者の肝臓関連イベントを予測することができる。この統合評価により、単独のLSM評価と比較してより詳細なリスク層別化が可能となり、これまで低リスクと考えられていたMASLD患者の中から高リスク患者を同定することができる。前年までにサルコペニア、脾臓硬度との関連を検討しており、今年度の検討と合わせてMASLD疾患のサルコペニア病態と肝脂肪化,肝線維化,門脈圧亢進症(脾硬度)の検討を行っている.
2: おおむね順調に進展している
NAFLD(現在はMASLDと名称変更されている)は過栄養の病態でありながら,骨格筋維持においては栄養障害の状態を呈するという2面性があり,サルコペニアの合併において独自の機序が想定されているが未解明である.本研究は,NAFLD患者に合併するサルコペニアの発症機序を肝臓の脂肪化,線維化,門脈圧亢進,胆汁酸組成変化の観点より解明するものである.本年度は2024年1月にMREによる肝硬度と予後評価についてJournal of Gastroenterology誌に報告し、現在サルコペニアとの関連をサブ解析を行っている。前年度までに報告した脾臓専用フィブロスキャン検査による脾硬度測定などが、食道静脈瘤の存在,および門脈圧亢進症の非侵襲的評価に有用性であることを報告していることを合わせ、本研究の成果がでている.
現在,脾臓専門フィブロスキャン装置で得られた門脈圧亢進症新規発症との関連結果やMRエラストグラフィを用いた予後測定の解析結果が得られそれぞれ海外誌に報告している。その症例のサブ解析が進行しており、NAFLD(現在はMASLDと名称変更されている)疾患に合併するサルコペニアの頻度,病態の解明を進めている.サブ解析においてはフィブロスキャンのCAPで測定した肝脂肪化、MRIのPDFFで測定した肝脂肪化も併せて評価を行っている.また現在NALFD患者の便を収集中であるが,サルコペニア病態に関与する便中,血中胆汁酸変化の検討を行い,MASLD患者におけるサルコペニア発症における門脈圧亢進症,胆汁酸成分の変化を検討する.
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すべて 雑誌論文 (26件) (うち国際共著 2件、 査読あり 25件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 8件)
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