研究課題/領域番号 |
21K08046
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石森 直樹 北海道大学, 医学研究院, 特任准教授 (70399848)
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研究分担者 |
横田 卓 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (90374321)
加畑 馨 北海道大学, 大学病院, 講師 (00399867)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | がん治療関連心筋障害 / アドリアマイシン心筋症 / 免疫老化 / 慢性心不全 / 心不全 / 老化関連T細胞 / 心エコー |
研究開始時の研究の概要 |
近年のがん診療の進歩によって、がん患者の寿命は大きく延長した。一方最近の調査では、がん治癒後に発症した心血管病で命を奪われるケースが少なくなく、がん治療との関連が報告されている。特に一部の抗がん剤では、「がん治療関連心機能障害」と呼ばれる重症心不全が引き起こされるが、現時点では確立した予防・治療法は存在しておらず、がん治癒後の患者にとって大きな脅威である。本研究は、抗がん剤による心筋障害のメカニズムとして「免疫老化」に着目し、がん治療関連心機能障害の早期発見および、効果的な予防・治療法の開発を目指すものである。
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研究実績の概要 |
近年わが国では急速な高齢化が進行してがん患者数は増加し、国民の2人に1人は生涯がんに罹患すると言われている。がんの早期発見や治療法の進歩により、がん患者の生命予後は著しく改善してきたが、再発がん患者では「がん死」に次いで死因第2位に「心血管病」が挙がっており、がん診療での心血管病の制御はきわめて重要な課題となっている。 アドリアマイシンをはじめとするアントラサイクリン系抗がん剤は、分子標的薬が登場した現代においてもリンパ腫、乳がんおよび肉腫などに対する標準的化学療法薬として重要な位置づけにある。しかし、累積使用量(アドリアマイシン換算)400mg/m<2>で約5%、700mg/m<2>では約25%と用量依存的に心筋障害を合併し、時に難治性心不全をきたして死に至る。疫学研究によって累積使用量のほか、年齢や放射線治療歴など心筋障害合併リスク因子が明らかにされているが、化学療法から年余を経て突然心不全を発症し、薬剤性心筋症と診断される例も少なくなく、細心の注意が必要である。 近年、加齢関連疾患の病態形成においていわゆる老化関連T細胞が出現する「免疫老化」の寄与が注目されている。我々はアドリアマイシン心筋症の発症・進展において「免疫老化」を基盤として慢性炎症が遷延し、心筋症発症に寄与するとの仮説を立てた。本研究の遂行によって、アドリアマイシン心筋症発症リスクのより正確な予測が可能となるばかりでなく、慢性炎症の制御という新たなコンセプトに基づくアドリアマイシン心筋症の予防・治療法の開発に貢献することが期待して本研究を立案した。 現在、標準的化学療法薬としてアドリアマイシンを用いたレジメで治療された悪性リンパ腫患者の治療フローを確認しながら、アドリアマイシン心筋症に関するレジストリ構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
近年、新たな分子標的薬などの登場によって、がん化学療法におけるアントラサイクリン系薬剤の臨床的位置づけが大きく変化している。各種ガイドラインではこれらの新規薬剤を用いた治療レジメの推奨度が上がり、アントラサイクリン系薬剤の使用頻度は相対的に低下しつつある。それに伴ない、アントラサイクリン系薬剤の累積投与量も減少し、がん治療関連心筋障害の合併リスクの高い患者数は減少傾向にあり、当初計画と異なりレジストリ構築を中心とした観察研究の立案・実施に大きな影響が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
一方近年臨床現場においては、チロシンキナーゼ阻害薬など新たな分子標的薬の使用頻度が増加しており、これらの新規薬剤によるがん治療関連心筋障害の発生頻度は増加しており、臨床的にも問題になりつつある。今後は、チロシンキナーゼ阻害薬など新たな分子標的薬によるがん治療関連心筋障害に着目してレジストリ構築するなど、本研究課題を推進してゆく予定である。
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