研究課題/領域番号 |
21K08078
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
永田 浩三 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (20378227)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | メタボリックシンドローム / ミトコンドリア抗酸化薬 / 心筋病態 / ミトコンドリア機能・動態 / 脂肪病態 / L-アルギニン / ミトコンドリア / 心筋 / アミノ酸 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らが確立したメタボリックシンドローム(MetS)の動物モデルを用いて、1)MetS病態、アミノ酸介入(L-アルギニン)、薬物介入(ミトコンドリアの抗酸化薬と分裂阻害薬)における心筋のミトコンドリア機能・動態変化とそれらの関係性を明らかにすることである。加えて、2)ミトコンドリアオートファジーとの関連や小胞体とのクロストークを含む多面的な解析を行うことで、MetS病態と栄養および薬物介入におけるミトコンドリア機能・動態変化の詳細な分子メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
研究代表者らが確立したメタボリックシンドローム(MetS)のラットモデルとやせ型対照ラットを用いて、ミトコンドリア抗酸化薬であるmitoquinol (MitoQ) のMetS、心筋、脂肪病態への影響を検討した。 病態の安定している生後13週齢から病態が悪化する17週齢まで、MetSラットに対してMitoQを100μMの濃度で給水瓶を用いて飲水投与した。また、対照ラットとMitoQを投与しないMetSラットに対してvehicleとして水を給水瓶にて投与した。 研究成果の要約と考察は次の通りである。① 対照群に比しMetS群では内臓肥満、インスリン抵抗性、高血圧が認められたが、MitoQはMetS群のこれらの指標に影響しなかった。② 心エコーではMetS群で左室肥大と左室拡張障害が認められた。MitoQ投与により左室肥大の程度は変わらなかったが、左室拡張障害が改善した。③ MitoQはMetS群の左室心筋細胞肥大には影響しなかったが、左室の線維化およびマクロファージ関連炎症を抑制した。④ MitoQはMetS群における左室心筋の活性酸素種(ROS)およびNADPHオキシダーゼ活性の増加を抑制するとともに、ミトコンドリアのROS産生の増加と膜電位の低下を抑制した。⑤ MitoQはMetS群の内臓脂肪細胞肥大とマクロファージ関連炎症には影響しなかったが、皮下脂肪細胞肥大とマクロファージ関連炎症を抑制した。 今回、既報(約100~500μM)における最小用量(100μM)のMitoQ飲水投与を用いた結果、既報と異なり、MitoQは糖代謝には影響しなかったが、ミトコンドリア機能障害と細胞の酸化ストレスを抑制し、左室のマクロファージ関連炎症、線維化、拡張障害を改善した。これらの結果は、ミトコンドリアROS、細胞のROS、心筋リモデリングの連関を示唆する興味深い所見と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に検体採取はほぼ完了し、心筋ミトコンドリア電顕観察用検体は樹脂包埋ブロックまで作製済である。 現在、心筋病態の解析のために心筋組織より抽出したRNAを用いて酸化ストレスやミトコンドリア機能に関わるmRNA 発現のreal-time RT-PCR解析、タンパク発現のウェスタンブロット解析の準備を行っている。また、本学分析機器部門バイオイメージング研究室の技術職員の指導を仰ぎ、電子顕微鏡標本作製に向け、固定・包埋済の心筋ミトコンドリアブロックの準薄切、超薄切のトレーニングに着手する準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
既報では、ミトコンドリア抗酸化薬であるMitoQ(200μM飲水投与)による食事性肥満の代謝異常やインスリン抵抗性の改善効果が示されているが、ミトコンドリア機能や動態への詳細な影響は明らかでない。今回、経費の都合で既報における最小用量(100μM飲水投与)のMitoQを用いた結果、インスリン抵抗性や高血圧には影響が見られなかったが、心筋のミトコンドリア機能障害と細胞の酸化ストレスを抑制するとともに、マクロファージ関連炎症、左室線維化、左室拡張障害の改善が認められた。 R5年度の継続課題(ミトコンドリア分裂阻害薬)に備えて、今後はミトコンドリア機能と動態の解析にまず重点をおき、ミトコンドリアオートファジーや小胞体ストレスとの関連の解析はその後に余裕があれば、実施することとする。 また、興味深いことにMitoQは内臓脂肪細胞肥大とマクロファージ関連炎症には影響しなかったが、皮下脂肪細胞肥大とマクロファージ関連炎症を改善した。MitoQの両脂肪病態への異なる影響の分子メカニズムも調べる予定である。
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