研究課題
基盤研究(C)
ミトコンドリアと小胞体が直接情報や物質を伝達する接着領域Mitochondria-associated ER membrane(MAM)は動的オルガネラネットワークとして細胞機能の維持に重要な役割をはたしており、疾病の発症基盤として注目されている。ミトコンドリア機能異常と小胞体ストレスを病態基盤として発症する心不全においてこれらのオルガネラ機能に密接に関与するMAMの制御機構の破綻が重要な役割を果たしている可能性がある。本研究の目的は、『心不全におけるMAM形成の意義および分子基盤』を明らかにするとともに、『MAM制御という新たなパラダイムに基づく心不全治療法の開発』を目指すものである。
心筋特異的Mitolノックアウトマウスに圧負荷により心筋リモデリングモデルを作成し心肥大が抑制されることを見出した。この抗肥大効果には心肥大シグナル因子の抑制および酸化ストレスのマーカーの減少を伴っていた。 また、心筋細胞にsiRNAによってMitolをノックダウンすると肥大刺激により誘発される心筋細胞肥大が抑制された。 GRP75阻害薬投与でも同様の抗心肥大効果およびその機序を認めた。MitolおびGRP75の機能阻害によりミトコンドリア-小胞体接触が減少し、抗肥大効果を示すことが明らかとなった。
本研究はオルガネラの連関という観点から新たな心心筋リモデリング・不全の進展機序を明らかにし、心不全病態の理解に寄与する。さらに、ミトコンドリアと小胞体に対する個別の介入ではなくそれらの関係性への介入が心不全の新たな治療ターゲットとなりうることを示しており、今までにない心不全治療創出の基盤となる。高齢化により心不全パンデミックとして今後増加が予想されている心不全患者に対する医療への貢献が期待される。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件)
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