研究課題/領域番号 |
21K08090
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
増田 信奈子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30342851)
|
研究分担者 |
松浦 勝久 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70433993)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 心臓線維芽細胞 / 血管新生抑制 / LYPD1 / 血管新生 / タンパク質発現 |
研究開始時の研究の概要 |
血管新生は生体の恒常性維持に不可欠であり促進系と抑制系のバランスにより制御されているが、抑制系については不明な点が多く残されている。申請者は心臓線維芽細胞が血管新生を抑制することを見出してその責任分子としてLYPD1を同定し、心臓における有意な高発現について報告し「LYPD1は血管新生抑制活性を介して心臓における恒常的な構造および機能の維持に寄与する」と想定した。本研究ではLYPD1の血管新生抑制作用の機能部位や相互作用分子の同定、遺伝子発現制御機構の解析によりその作用機序を明らかにするとともにLYPD1の機能制御の可能性を探り、心臓における血管新生抑制系の生理的・病理的意義の解明につなげる。
|
研究実績の概要 |
血管新生は生体の恒常性維持に不可欠であり、促進系と抑制系のバランスにより制御されているが、抑制系については不明な点が多く残されている。これまでに心臓線維芽細胞が血管新生を抑制することを見出し、その責任分子として心臓において有意な高発現するLYPD1を同定し、「LYPD1は血管新生抑制活性を介して心臓における恒常的な構造およびその機能の維持に寄与する」と想定している。本研究では心臓線維芽細胞による血管新生抑制作用の生理的・病理的意義の解明に向けて、責任分子であるLYPD1の作用機序を明らかにし、機能発現制御法を探ることを目的とした。今年度はLYPD1の機能部位に対する特異抗体の作製やプルダウンアッセイによる相互作用分子の同定に向けてリコンビナントLYPD1タンパク質の大量調整法の確立を試みた。昆虫細胞を用いてリコンビナントLYPD1を調整することは出来たが、得られたタンパク質に血管新生抑制活性は見られず、昆虫細胞発現系では活性を保持したLYPD1の調整は難しいと判断した。これを踏まえ、機能部位を含むペプチドを抗原とした特異抗体の作製を検討している。また、LYPD1相互作用分子の同定に向けて、血管内皮細胞膜タンパク質調整、プルダウンアッセイについて条件検討をすすめアッセイプロトコルを作成した。LYPD1の遺伝子発現制御機構についてはGATA6がLYPD1の発現を正に制御する転写因子であることを学術誌で報告し、GATA6によるLYPD1遺伝子発現制御はGATA6の遠位調節部位への結合によると推論した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心臓線維芽細胞による血管新生抑制作用の生理的・病理的意義の解明に向けて、責任分子であるLYPD1の作用機序を明らかにするためにLYPD1の機能部位(研究項目1)や相互作用分子(研究項目2)、遺伝子発現制御機構(研究項目3)について検討を進めている。今年度はLYPD1の特異抗体の作製(研究項目1)やプルダウンアッセイによるLYPD1相互作用分子の同定(研究項目2)にむけて、昆虫細胞タンパク質発現系を用いたLYPD1の大量調整法の検討をすすめた。GST融合LYPD1配列を組み込んだバキュロウイルスをExpiSf9に感染させたのちアフィニティー精製によりGST融合LYPD1タンパク質を調整した。このタンパク質をHUVECのマトリゲルアッセイに添加したところ、血管新生抑制活性は見られなかった。LYPD1はジスルフィド結合を多く含む分子であるため、昆虫細胞発現系では活性を保持した構造でのタンパク質発現に至らず血管新生抑制活性が見られなかったと判断した。これを踏まえ、今後は機能部位を含むペプチドを抗原とした特異抗体の作製をすすめる。 LYPD1相互作用分子の同定(研究項目2)に向けては血管内皮細胞膜タンパク質調整法、プルダウンアッセイについて条件検討をすすめた。膜タンパク質抽出に用いるbufferやLYPD1タンパク質に融合させるタグの最適化を図りアッセイプロトコルを作成した。 遺伝子発現制御機構(研究項目3)についてはGATA6がLYPD1の発現を正に制御する転写因子であることを学術誌で報告した。GATA6 siRNAによるLYPD1遺伝子発現抑制およびGATA6強制発現によるLYPD1プロモーター活性化の割合が十分に高くないこと、またLYPD1遺伝子プロモーター領域には配列により予測されるGATA6結合領域がないことからもGATA6は遠位調節部位への結合が予想されると言及した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに部位特異的変異を導入したリコンビナントLYPD1を作製し、それらの血管新生抑制活性を評価することでLYPD1の機能部位を絞り込んでいる。そこでLYPD1の機能制御にむけて、機能部位を含むペプチドを抗原として抗体作製を試みる。抗血清の中和活性は血管内皮細胞のマトリゲルアッセイにLYPD1とともに添加することにより評価するとともに、心臓線維芽細胞と血管内皮細胞との共培養時に添加してLYPD1の血管新生抑制を制御し得るか検討する。 LYPD1の相互作用分子の同定については、今年度の条件検討により作成したプロトコルに基づいて血管内皮細胞膜画分からのプルダウンアッセイを行い、得られたLYPD1を含むタンパク質複合体の質量分析を行い候補分子の検索をすすめる。これと並行してヒトプロテインアレイを活用した相互作用タンパク質の検索についても検討をすすめる。得られた候補分子とLYPD1とのタンパク質間相互作用の検証は、候補分子の抗体を用いたプルダウンアッセイや二分子蛍光補完法、均一性時間分解蛍光法などのバインディングアッセイにより行う。同定した相互作用分子について既存の抗体や阻害剤があれば、それらを用いてLYPD1の血管新生抑制に及ぼす影響を検証し、LYPD1の機能制御につなげる。 LYPD1遺伝子発現を正に制御するGATA6についてラットを用いて生体における発現をリアルタイム定量PCR、ウェスタンブロットおよび免疫染色等で検証しLYPD1の機能制御の可能性を探る。
|