研究課題
基盤研究(C)
動脈硬化性心血管イベントの初発・再発予防に必須な薬剤であるスタチンが継続服用困難(不耐)となるメカニズム解明をリサーチクエスチョンとし、extreme phenotypeである完全不耐例に焦点を絞って、全エクソン塩基配列の決定、ゲノムワイド多型連鎖解析を用いた先行研究で得られた連鎖多型が存在する遺伝子における非翻訳領域を含むディープシークエンシング、保存血清を用いた液性因子としてのリピドーム網羅的解析、および患者細胞を用いた細胞生物学的機能解析、を行う。並行して、スタチン長期服用でも全く筋障害を認めていない真の対照例にも同様の解析を行い、知見の病態特異性ならびに人種特異性の検証を目指す。
1)スタチン完全不耐例の遺伝子解析:前年度までに同意取得済の完全不耐2例に加え、令和5年度新たに診断し研究参加の同意が得られた完全不耐1例、の計3例を対象に、末梢血を採取し全エクソームシークエンシングを行った。研究当初は自施設での解析を予定していたが、COVID-19蔓延の影響を受け外部解析機関への委託に切り替え、年度前半に委託先を選定し、後半に契約さらには解析実施に至った。解析結果を入手後は、次世代シークエンサーを用いた解析結果と、健常日本人由来の公表されたデータベースとの突合を、以下の段階的手法にて進行中である;①nonsense変異の検出、②missense変異→機能的変化の可能性検討、③スタチン薬物代謝関連遺伝子、細胞内コレステロール代謝関連遺伝子、を候補として、それらの高頻度多型の組み合わせとの連鎖検討。2)リピドーム解析:長期(2年以上)のスタチン服薬にも拘らず筋障害を発症しない「真の対照例」について、血中脂肪酸網羅的測定を行ったが、年齢・性別をマッチさせたスタチン非服用者ならびに正常対照者との間に有意な差を認めなかった。3)プロテオーム解析:リピドーム解析の結果を踏まえて解析を実施する予定であったが、前項の記載通りこの段階には到達できなかった。
4: 遅れている
遺伝子解析を外部解析機関に発注し完了したが、その結果と日本人健常人データベースの比較作業中に能登半島地震が発生し、その被害対応に追われ研究進捗が頓挫した。
全エクソン塩基配列解析結果と健常日本人データベースとの突合を進めており、変異部分の洗い出し、その病的意義の吟味、に進む予定である。
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