研究課題/領域番号 |
21K08140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
渡邉 英一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80343656)
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研究分担者 |
寺本 篤司 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (00513780)
祖父江 嘉洋 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (20724793)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 突然死 / 深層学習 / 心電図 |
研究開始時の研究の概要 |
日本では年間約7万人が心臓突然死で亡くなる。この原因の多くは心室性不整脈である. 心臓突然死による社会的、経済的損失は大きく、また、遺族の心理的ダメージも大きい. 本研究では、心臓突然死を起こす可能性の高い患者を予測する新たな方法を開発することを目的とする。正常あるいは境界域の膨大な心電図データを、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network)を用いて、心臓突然死を起こした症例の仮想心電図に変換し、変換前の心電図との差を検出評価することによって、心臓突然死発生に関連する心電図部分を明らかにする斬新な技術を開発する.
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研究実績の概要 |
消防庁の年次報告によると、日本では年間約7万人が不整脈を主とする心臓突然死で亡くなる。この多くは基礎に急性冠症候群(急性心筋梗塞と不安定狭心症)や心筋症などの器質的疾患や、ブルガダ症候群や先天性QT延長症候群などの遺伝性疾患を伴うとされる。心臓突然死を起こした症例は生前に何らかの心電図異常を伴うことが多いが、中には正常範囲あるいはあるいは正常境界域程度のものもある。そこで、心臓突然死症例の生前心電図と正常心電図を使用して、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network: GAN)により、心臓突然死症例の仮想心電図に変換し、変換前の心電図との差を検出評価することによって、心臓突然死リスクを予測する斬新な技術を開発することを目標とした.まず当院で記録された80万例の12誘導心電図データをmedical waveform format encoding rule(MFER)形式に変換し、この中より心臓突然死から生還した症例を抽出し、以下に述べるGANを使用して上記の目標達成を試みている。パイロット研究としてcycle GANを使用した。これは心臓突然死症例数に限りがあるため、厳密なペア心電図でなくても、柔軟に変換可能で一方の心電図から他方の心電図を生成し、他方の心電図から一方の心電図に戻した時に精度が高くなるように学習させている。また、条件付きGANと呼ばれる、conditional GANも手掛けている。これには生成器と識別機に画像データに加えて追加の情報を与えることで、条件付けができるように訓練を行っている。さらに、結果の安定化のためにdeep convolutional GANも手掛けている.今後は、心筋梗塞、ブルガダ症候群や先天性QT延長症候群など疾患ごとに解析を行うとともに調整を加えて転帰の予測能を向上させることを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
12誘導心電図の処理と解析については、民間業者の協力も得られた結果、順調に進んでいる。今回のさまざまなGANを用いたパイロット研究では深層学習の実施要領や問題点も確認できたため、研究土台は固まったと考えている。上記に述べたように、パイロット研究としてcycle GAN、conditional GANおよびdeep convolutional GANなど、現在使用できるGANのアルゴリズムを試行し、画像データに加えて追加の臨床情報を与えることで、条件付けと安定したデータがでるように訓練を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
深層学習を用いた心電図の診断支援には、多くの正確な識別モデルと生成モデルが必要である。しかし、アノテーションの難しさやデータの不足が問題となっている。GANを使用して、正常と異常の心電図を突然死発症例の心電図に変換することで、不足しているデータを生成することができ、より高い精度で深層学習を実行することができる可能性がある。また、患者の複数のデータ群の関連性を考慮してデータ生成を行うことで、病気のメカニズムをより深く理解できる可能性がある。この方法を使用することで、単なる形態的な画像変換に留まらず、より高度な医学的理解を得ることができるかもしれない。私たちは、呼吸器や消化器疾患画像のGANによる画像生成に成功しており、多くのノウハウがすでに蓄積されているため、実現性が高いと考える。また、研究対象の心電図はバイナリ化されているため、多施設共同研究も容易に始めることができる。ただし、GANによるデータ生成には、生成された画像が実際のデータとどの程度一致しているかを評価する必要があり、この点については、十分な検討が必要である。加えて、生成されたデータが医療現場で実際に使用される前に、十分な検証や承認が必要である。以上を考慮した上で、本研究は、医用画像の診断支援に貢献する可能性があるため、引き続き検討していきたい。
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