研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は生命予後が悪く, 治療が確立されていないが、特発性PAH(IPAH)は、炎症性サイトカインの関与が示唆され,サイトカインは新規治療夕一ゲットとなる可能性が着目されている。先行研究によりQuality-Quantity Cultured Cells (QQ細胞) は、血管再生能・組織再生能・抗炎症効果を有する細胞群であり、脚虚血や心筋梗塞、劇症型心筋炎に対する有効性が示唆されている。 本研究では、IPAHの組織変化に類似したラットモデルにQQ細胞を静脈投与し,生存期間、肺組織評価と心臓超音波検査により肺動脈血流速度波形のAcT/ET, VTIを測定し, 細胞移植治療効果を検討した。 F344ラットに、VEGF receptor blockerを投与後, 低酸素暴露3週間後にPAHラット(Sugen/Hx)を作製した。PAHラットに対して, QQ細胞の単回静注をSugen投与後5週間の生存期間に有意差を認めず、Sugen皮下注後3週間目(Sugen/Hx : 3W), 5週目(Sugen/Hx : 5W)に2回QQ細胞静注した。PBS投与群(コントロール群)、QQ細胞静注未実施群{QQ(-)}と, QQ細胞静注群{QQ(+)}で検討した結果、QQ(+)群はSugen皮下注後12週以降も生存可能であったが, QQ(-)群は, 10週までに全例死亡した。肺組織のPCR解析結果により、コントロール群と比較し、で、抗炎症作用を示すM2マクロファージのFizz1が増加し、炎症作用を示すIL-6, TNFαが減少した。QQ投与の有無によるAcT/ETやVTI値に、有意差は認めなかった。QQ(+)群は、 QQ細胞の2回投与により長期生存が可能であり、QQ細胞移植治療による肺への抗炎症作用の有用性が示唆された。
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