研究課題/領域番号 |
21K08174
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
石塚 全 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (50302477)
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研究分担者 |
門脇 麻衣子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (20401979)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | OGR1 / 気管支平滑筋細胞 / ステロイド抵抗性 / CTGF / 気道リモデリング / プロトン / コバルト / ニッケル / 気管支喘息 / TGF-beta / グルココルチコイド / 金属 / サイトカイン / マトリセルラー蛋白質 / 難治性喘息 / 気道平滑筋細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
難治性喘息の病態では気道構成細胞のステロイド抵抗性や気道リモデリング形成が重要である。ヒト気道平滑筋細胞(ASMC)から各種刺激によって、サイトカイン、マトリセルラー蛋白質が産生されるが、それらのなかで、ステロイドによって産生が抑制されにくい物質とその刺激物質を見出す。次に細胞レベルでのステロイド抵抗性へのInterferon Regulatory factor-1(IRF-1)、NF-kappaB、グルココルチコイド受容体(GR)などの転写因子、JNK、p38 MAPK活性化、HDAC2の関与を中心に検討する。さらにASMCのサイトカイン産生に対する亜鉛の抑制効果、その作用機序を解明する。
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研究実績の概要 |
ヒト気管支平滑筋細胞(BSMC)にはプロトン感知性Gタンパク審共役型受容体の1種、Ovarian cancer G protein-coupled receptor 1(OGR1)が発現しており、プロトン(細胞外酸性)刺激をを受けると、サイトカイン(IL-6、IL-8)、connective tissue growth factor (CTGF)を産生することを報告してきた。コバルト(Co)やニッケル(Ni)はOGR1のリガンドとしてプロトンと同様にBSMCのサイトカイン産生を促進するが、OGR1を介するこれらのサイトカイン産生はdexamethasone (DEX)によって抑制される。一方、BSMCはOGR1を介するプロトン、Co、Ni刺激またはtransforming growth faktor(TGF)-β刺激によってCTGFを産生する。OGR1およびTGF-β刺激によるCTGF産生はDEXには抑制されず、逆にDEX は単独でCTGF産生を促進する。プロトン、Co、またはNi刺激とTGF-β刺激は相加~相乗的にCTGF産生を誘導するが、プロトン刺激とCoまたはNi刺激はCTGF 産生に関して、排他的に作用する。Co、Niは低酸素刺激と同様に、細胞内hyoxia-inducible factor(HIF)の発現を誘導する。当初、私たちはCo やNiはHIFの細胞内での増加を介してCTGF産生を誘導すると予想していたが、予想に反して、CoやNiはプロトンの作用に拮抗的に作用した。そこでHIFの細胞内での分解を促進するHIF-prolyl hydroxylase(HIF-PH)を阻害するDMOGやIOX2がプロトン刺激によるCTGF産生を阻害することを見出し、細胞内HIFの増加はプロトン刺激によるCTGF産生を抑制することを想定して、その細胞内機序に関する研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト気管支平滑筋細胞(BSMC)の機能におけるステロイド抵抗性を研究する過程でプロトン刺激、TGF-β刺激によるマトリセルラータンパク質のCTGFの産生はDEXによって阻害されず、むしろDEXは単独でCTGF産生を促進する。私たちは金属のCoとNiがOGR1のリガンドとして作用し、BSMCのIL-6、IL-8産生を促進することを報告してきた。CoとNi は細胞外pH 7,4 では単独で、CTGF 産生を促進するが、プロトンとCoまたはNiの共刺激ではCTGF産生に相加的には作用せず、むしる拮抗的に作用することを見出した。またTGF-βとプロトン、CoまたはNi の共刺激はCTGF産生において相加的~相乗的に作用するが、Co、NiはプロトンとTGF-βの共刺激によるCTGF産生においても阻害的に作用することを見出した。ステロイド抵抗性のCTGF産生に対して、CoやNiは促進的に作用するにもかかわらず、プロトン刺激やプロトンとTGF-βの共刺激に対しては阻害作用を示す細胞内機序を検討することとした。当初、CoやNiは低酸素刺激のモデル刺激として用いられ、HIF-1α誘導作用があるので、OGR1を介する作用とは別にHIF-1αの活性化(細胞内増加)を介してCTGF産生を誘導するのではないかと予想していたが、逆に細胞内に増加するHIF-1αはOGR1を介するCTGF産生を阻害するのではないかという仮説をたて研究を進めることにした。HIF-1αの細胞内での分解を阻害するHIF-PH 阻害薬のDMOG、IOX2で処理するするとCo、Ni刺激と同様にBSMCの細胞内HIF-1αの増加が確認された。なぜ、プロトン刺激またはTGF-βとプロトンの共刺激を介するCTGF産生が、細胞内HIF-1αを増加させる処置によって抑制されるのか明確できていないが、おおむね研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
Co、Niと同様に細胞内HIF-1αを増加させるHIF-PH阻害薬(DMOG、IOX2)がどのような機序でプロトン(細胞外酸性)刺激によるBSMCのCTGF産生を抑制するのかその機序を解明していく。プロトン刺激(pH6.3)、コントロール(pH7.4)、TGF-β1(pH7.4)、TGF-β1(pH6.3)の4条件でBSMCを0-24時間培養し、CTGF mRNA、CTGFを経時的に測定する。DMOG(50 μM)およびIOX2(50μM)はpH6.3の培養液で24時間培養しても細胞の生存率を下げず、細胞毒性はないと考えている。また、DMOGおよびIOX2はプロトン刺激(pH6.3)またはTGF-β1(pH6.3)刺激の24時間後のCTGF産生をタンパクレベルでは強力に抑制することを確認している。DMOGとIOX2は前処置なく、プロトン、TGF-β1刺激と同時に培養液中に添加しているので、刺激後のCTGF mRNA発現を経時的にどの時点で抑制しているのかreal-time PCRにより検討する。また、siRNAを用いて、細胞内HIF-1α、ARNT(HIF-1β)の発現を低下させて、HIF-1がどのようにCTGF産生に影響するのかについて解析を進めていきたい。
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