研究課題/領域番号 |
21K08232
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 敏昭 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10432931)
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研究分担者 |
山田 俊輔 九州大学, 大学病院, 助教 (10419608)
鳥巣 久美子 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20448434)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 心筋肥大 / 慢性腎臓病 / FGF23 / インドキシル硫酸 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性腎臓病患者において心不全は主要な死因の一つであり、その原因として心筋肥大の合併が多いことが報告されている。近年、リン利尿ホルモンであるFGF23と心筋肥大との関連が報告されている。尿毒素であるインドキシル硫酸がFGF23の発現に影響を与えるか更に慢性腎臓病の心筋肥大に影響しているかを検討し、腎不全患者の予後を改善するための新規機序について検討する。
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研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)患者は本邦において増加の一途をたどっており、成人の8人に1人はCKDであることが知られれている。CKD患者は心血管病の合併率が高く、特に心不全の管理が重要である。近年、リン尿ホルモンであるFGF23がCKDの進行とともに血中濃度が上昇し、CKD患者の心肥大に影響することが示唆されている。その機序は不明な点が多く、CKD患者の予後改善のため、心肥大の予防は重要な課題である。 本研究において、CKDによって血中に蓄積するインドキシル硫酸が、FGF23の上昇に影響し、心肥大を増悪させる可能性について検討した。 前回までに、ラット心筋細胞H9c2細胞に対して、FGF23蛋白を50ng/dLおよび100ng/mL投与したところ、心肥大マーカーおよび線維化マーカーの発現上昇を認めた。同様に、H9c2細胞に対して、インドキシル硫酸を0.25mMおよび1.0mM投与したところ、心肥大マーカーおよび線維化マーカー、さらに、FGF23の発現上昇を認めた。今回、インドキシル硫酸は、心筋細胞においてFGF23の分解を抑制するGLANT3を上昇させることが明らかとなり、この機序で血中のFGF23の蛋白が増加することが明らかになった。さらに、インドキシル硫酸は、心筋細胞のHIF1αを活性化し、FGF23 mRNAの発現を増加させた。これらの機序により、インドキシル硫酸はFGF23の上昇を介して、心筋肥大に影響する可能性が示唆された。 また、マウスに片腎摘出を行い軽度腎障害を惹起し、インドキシル硫酸を投与したところ、インドキシル硫酸により心筋肥大が起こることを確認した。この肥大した心筋にはFGF23蛋白の発現上昇を認めた。これらの結果より、CKD患者において蓄積したインドキシル硫酸がFGF23を上昇し心筋肥大に影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット心筋細胞H9c2細胞に対して、FGF23蛋白を50ng/dLおよび100ng/mL投与したところ、心肥大マーカー(ANF, BNP, βMHC)および線維化マーカー(αSMA, コラーゲンⅠ)のmRNAの発現上昇を認めた。同様に、H9c2細胞に対して、インドキシル硫酸を0.25mMおよび1.0mM投与したところ、心肥大マーカー(ANF, BNP, βMHC)および線維化マーカー(αSMA, コラーゲンⅠ)、さらに、FGF23のmRNAの発現上昇を認めた。また、インドキシル硫酸は、心筋細胞においてFGF23の分解を抑制するGLANT3を上昇させることが明らかとなり、この機序で血中のFGF23の蛋白が増加することが明らかになった。さらに、インドキシル硫酸は、心筋細胞におけるHIF1αを活性化し、FGF23 mRNAの発現を増加させた。また、マウスに片腎摘出を行い軽度腎障害を惹起し、インドキシル硫酸を投与したところ、インドキシル硫酸により心筋肥大が起こることを確認した。この肥大した心筋にはFGF23蛋白の発現上昇を認めた。これらの結果より、心筋肥大の機序に、FGF23とインドキシル硫酸は関連性がある可能性がある。実験はおおむね予定通り遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
CKD患者においてFGF23の血中濃度の上昇と分解の低下が起こることが報告されている。このことについて、培養心筋細胞および培養骨細胞を使用して、インドキシル硫酸によるFGF23の上昇が、全長型であるIntact FGF23の上昇と分解型であるc末端FGF23のどちらが上昇しているかについて検討する。
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