研究課題/領域番号 |
21K08289
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
大橋 靖 東邦大学, 医学部, 教授 (00408858)
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研究分担者 |
酒井 謙 東邦大学, 医学部, 教授 (10215585)
常喜 信彦 東邦大学, 医学部, 教授 (40349882)
山田 陽介 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部, 室長 (60550118)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 体液過剰 / バイオインピーダンス分析 / Na利尿ペプチド / サルコペニア / 細胞内外水分量比 / Quality of Life / 生命予後 / 水・電解質代謝学 / 人工透析学 / 体組成学 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性腎臓病患者における体液量の調整は重要な患者管理の一つである。しかし,未だその定量的評価法は確立されていない。申請者らは,これまでに日本人健常者サンプルを用い,多周波生体電気インピーダンス法における加齢に伴う標準的な細胞内外の体液量変化を示す2次回帰式を作成した。本研究では,その式から標準的な細胞外水分量の推定値を算出し,実測値と推定値の差を過水和(overhydration; OH)と定義し,慢性維持透析患者の過水和(OH)と体液量の多角的な臨床指標,Na利尿ペプチド,および有害転帰との関係を解析し,本方法による透析適正体重(ドライウェイト)の定量的評価の妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
慢性維持透析4施設から研究同意を得た透析後の体組成検査を行った血液透析患者428名から除外基準に当てはまる41名とデータ欠損のある19名を除き,計368名(年齢65±12歳,男性261名女性107名)のサンプルデータを取得し,そのうち322名からKDQOL-SFのアンケート調査結果を得た。 過水和 (OH) は体組成検査実測値と年齢別標準細胞内外水分量比から求めた値であり,その中央値(10-90%tile)は0.34((-0.42 to 1.29)Lper 1.73m2であった。過水和 (OH) と透析後hANPの相関はγ = 0.50の相関を認め,回帰式より透析後hANP100と43 pg/mlの時の過水和 (OH) は,それぞれ0.57と0.13 × A/1.73 Lと算出された。過水和 (OH) を4分位で群別化(Q1:<-0.10L, Q2:-0.09‐0.33L, Q3:-0.34‐0.78L, Q4:0.79‐3.22L)した臨床データにおいて,高い過水和 (OH)群は低い群に比し,高齢,透析歴が長く,BMI,総除水量が低値で,透析後血圧が高値で,TP,Alb,BUN,Cr,Hbが低い傾向にあった(P<0.05)。心エコーでは左房径が大きく,左室心筋重量係数が高い傾向にあった(P<0.05)。また,Q4群は全方向性に健康関連QOLが低い傾向を示した。平均観察期間3.96年において,各群の累積死亡率は(Q1:1.1, Q2:2.7, Q3:3.6, Q4:8.4 /100-患者年, P<0.001)であった。 これらの結果は,本方法による透析適正体重(DW)の定量的評価の妥当性を示している。このような体液平衡異常は心容量負荷に対する予備力を低下させ,体液平衡の安全域を狭め,患者のQOLおよび生命予後を大きく低下させているという新しい知見をもたらしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象患者を387名まで得ることができた。当初,他の医療機関への協力も予定していたが,いくつかの施設で患者サンプル集積が困難になった。また、活動量計による患者活動度の評価に関する患者サンプル集積は苦慮している。しかし,本研究の主目的である「目的1-1) 過水和(OH)と心容量負荷の相関性を検証」と「目的1-2) 推定透析適正体重(ドライウェイト)の臨床的妥当性を検証」には十分なサンプル数である。本主研究のpreliminayな研究として Nakayama Y, et al. Association between Intra- and Extra-Cellular Water Ratio Imbalance and Natriuretic Peptides in Patients Undergoing Hemodialysis.Nutrients. 2023;15(5):1274.doi: 10.3390/nu15051274.を上梓した。この論文を基軸に集積されたデータで,透析適正体重(ドライウェイト)の定量的評価法の研究が進んでいる。また,体液過剰とQOLの関係について,Yamazaki K et al. Associations between N-Terminal Pro-B-Type Natriuretic Peptide, Body Fluid Imbalance and Quality of Life in Patients Undergoing Hemodialysis: A Cross-Sectional Study. J Clin Med. 2023;12(23):7356. doi: 10.3390/jcm12237356.を上梓した。 研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主目的である「目的1-1) 過水和(OH)と心容量負荷の相関性を検証」と「目的1-2) 推定透析適正体重(ドライウェイト)の臨床的妥当性を検証」には十分なサンプル数であると考える。現在,今回集積されたデータでこれらの課題を検証中である。目的1-2)に含まれている過水和 (OH) と臨床的指標を用いたドライウェイトスコアリング評価の比較は,より精度の高い研究にするため,「慢性維持透析患者における体液平衡異常に伴う8つの臨床兆候に基づいたドライウェイトスコアリングシステムの開発のためのプロジェクト」のデータサンプリング中である。その中で改めて目的2-1) に関連する患者QOLおよび目的2-2)に関連するADLの評価を予定している。目的2-2)に関して、本データ解析中に体組成測定により得られたskeletal muscle mass index (SMI)とE/I比を組み合わせることで、筋肉の量と筋肉の質の両方を評価できる可能性があり,これを解析中である。また,低栄養-骨格筋減弱-体液過剰連関に着想し,これを解析中である。「目的2-3) 過水和(OH)と有害転帰との関係を調査」は現在対象患者を前向きに追跡し,平均3.96年観察している。
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