研究課題/領域番号 |
21K08322
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小池・熊谷 牧子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座助教 (30391949)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 結節性硬化症 / TSCモデルマウス / mTOR / ミクログリア / 行動解析 / シロリムス / ラパマイシン / 神経皮膚症候群 / てんかん / mTORC1 |
研究開始時の研究の概要 |
結節性硬化症(TSC)は、皮膚と神経系を中心に異常が現れる遺伝性の「神経皮膚症候群 」である。てんかん発作や発達障害の罹患率が高く、患者のQOLに影響を与える。TSCでは、Tsc1/Tsc2遺伝子の機能低下によるmTORキナーゼの過剰な活性化が原因と考えられている。一方で、症状の個人差が大きいことが治療を難しくしているが、その原因は不明である。本研究では、TSCモデルマウスを用いてミクログリアと、転写因子として機能するステロイドホルモン受容体についての解析を行い、症状の個人差の原因を追究することを目的とする。さらに、皮膚細菌叢解析により、異なった視点から病態の解明と新しい治療法の開拓を目指す。
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研究実績の概要 |
結節性硬化症(TSC)は、皮膚と神経系を中心に異常が現れる遺伝性疾患である。てんかん発作や発達障害の罹患率が高く、 患者のQOLに影響を与えることが問 題となっている。TSCでは、Tsc1/Tsc2遺伝子の機能低下によるmTORキナーゼの過剰な活性化が原因と考えられており、mTOR阻害剤シロリムス(ラパマイシン)と、てんかん 発作を起こすTSCモデルマウス(Mitf-Cre, Tsc2(KO /KO)を用いて病態形成の機序について解析した。 ①TSCモデルマウス(6週齢)の発作の測定及び行動解析 により、このモデルマウスが不安傾向、多動性、自閉症、記憶障害があることが分かった。このうち、不安傾向、多動性、自閉症、記憶障害 については、シロリムスの腹腔内投与により改善された。 ②脳波測定により、Tscモデルマウスでは、発作時にβ波が上昇することがわかった。ただし、マウスは小さいため、脳に設置できる電極の数が限られるため、てんかんの原因部分の特定のためには、電極の開発が必要となっている。 ③脳切片の免疫染色:ミクログリアの形態観察により、シロリムス処理がミクログリアの極性を抗炎症性にシフトさせることが分かった。 ④mRNA 発現量測定により、てんかんを起こすTsc2モデルマウスで、ミクログリアの極性が炎症性にシフトしているとき発現するアデノシン受容体A2が強く発現することが分かった。また、シロリムスによりミクログリアが抗炎症性に分極しているときには、ADP受容体P2Y12が強く発現することが明らかになった。 ⑤脳内ステロイドホルモンの測定:whole brainを採取 し、ステロイドホルモンを測定した。 ステロイドホルモン合成酵素の発現を調べ、オスとメスでの症状の違いに関連があるかを解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスが足りないため、ERαの解析が遅れているが、脳内ステロイドホルモンの測定結果をもとに、関連するステロイドホルモン合成酵素の発現や、ER α拮抗剤を使った実験を進めている。 皮膚細菌叢解析は、動物実験施設の改修により何度となく飼育環境が変わったため、同条件のサンプルを採取することが困難な状況なっている。たとえば、皮膚の細菌を採取し始めたときにはオープンケージだったものが閉鎖系のケージに代わったが、これによって細菌叢の多様性が減少するなどの大きな変化が起き、今までのデータとの比較が不可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
現在使っているTSCモデルマウスは、Mitf-Creの発現依存的にTsc2がノックアウトされた動物である。このTSCモデルマウスは、行動解析により、多動性や記憶に関して、オスとメスの性差が確認させている。そこで、脳の機能にも影響を与えるステロイドホルモン:エストロゲン、プロゲステロンおよび、それらの受容体に注目して解析を進めている。 マウスの脳のホルモン測定をしつつ、ホルモン合成酵素の発現について調べている。 また、エストロゲンレセプターは転写因子としても知られている。モデルマウスの脳の組織からの抽出物による免疫沈降実験により、Tsc2がエストロゲンレセプターと結合することがわかってきた。Tsc2が欠損しているこのTSCでは、Tsc2と結合しないエストロゲンレセプターが別の因子との結合により、遺伝子発現が変化し、性差を引き起こしている可能性がある。そのため、エストロゲンレセプターが、Tsc2の代わりに結合している因子が何かを明らかにする。
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