研究課題
基盤研究(C)
申請者らは、ヒト同様、表皮基底層にメラノサイトが分布するK14-Scfマウスに、gp100特異的CD8+T細胞(PMELs)の静注、放射線照射、IL-2の腹腔内投与およびgp100ペプチドパルス樹状細胞ワクチンの静注を行い、5-7週後にヒト尋常性白斑に酷似した白斑を形成するマウスの作製に成功した。本研究では、このin vivoの系に、IFN-γなどの細胞傷害性分子の遺伝子を欠失したPMELs、メラノサイトレポーターマウスなどを導入し、免疫学的解析・遺伝子解析・3次元ライブイメージングを行うことで、尋常性白斑におけるメラノサイト消失機構を明らかにする。
細胞死には、アポトーシスなど様々な形態が存在するが、細胞死後に残された細胞体は、核、ミトコンドリアなど多くの起炎物質を含み、不必要なものとして貪食細胞により除去される。ところがメラノサイトは、炎症をほとんど起こすことなく、消失していく。我々は、メラノサイト同様に炎症を起こすことなく細胞死に至る角化細胞では、細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度が約1時間上昇した後、Ca2+濃度が高いまま細胞内が酸性化することをライブイメージング法にて発見した。そこで、我々は、ロドデンドロールなどの薬剤によって生じるメラノサイト細胞死にはCa2+濃度やpHの変化が寄与しているか明らかにするため、Caイオンプローブ(GCaMP及びRCaMP)やpHプローブ(Venus-mCherry)を発現するヒト初代表皮メラノサイトを作製することに成功した。メラノサイトはメラニン合成を行う細胞で、メラニン合成には、酸素(O2)が必要であることが知られている。しかし、表皮に存在するメラノサイトに、どのようにO2が供給されるのか、その詳細なメカニズムは不明である。我々は、表皮上層に特異的に発現する遺伝子群を、マイクロアレイやRNA-seqを用いて網羅的に発現解析を行った。その結果、ヘモグロビンα(HBA)のmRNAが、ヒトとマウスの表皮上層で高発現していることが明らかにした。さらに、ヒト・マウス皮膚の免疫染色解析にて、HBAタンパク質が、特に毛包峡部の角化細胞で高発現していることを発見した。毛包峡部のヘモグロビンによってO2がメラノサイトに供給される可能性が示唆された。
3: やや遅れている
メラノサイトにCaイオンプローブ、pHプローブを導入することに時間を要した。またメラノサイトを表皮に発現しているK14-SCFヘアレス(HR)マウスにおいてメラノサイト特異的に(チロシナーセプロモーター下に)Venus-mCherryを発現するK14-SCF:HRマウス(メラノサイトpHイメージングマウス)、GCaMPとRCaMPを発現するK14-SCFマウス(メラノサイトCa2+イメージングマウス)の作製に時間を要し、メラノサイト細胞死の過程をin vivoで確認する系がようやくできつつあるため。
1. Ca2+濃度やpHの変化がメラノサイト細胞死に与える影響の検証K14-SCF:HRマウスにロドデンドロールを塗布すると2週間で白斑が誘導されることが知られている。そこで、メラノサイトCa2+イメージング及びメラノサイトpHイメージングマウスに、ロドデンドロールを塗布し、メラノサイト細胞死の過程で、どのようにメラノサイト細胞内のCa2+やpHが変化して行くのか共焦点または2光子顕微鏡を用いてtime lapse観察する。また、Caイオンプローブ(GCaMP及びRCaMP)やpHプローブ(Venus-mCherry)を発現したヒト初代表皮メラノサイトにもロドデンドロールやメラノサイトを特異的に認識するCD8+T細胞を加え、メラノサイト細胞内のCa2+やpHが、どのように変化していくか共焦点顕微鏡を用いてtime lapse観察する。2:毛包峡部のヘモグロビンがメラニン合成に与える影響の検証毛包峡部のケラチノサイトではSox9が発現することが知られている。我々の研究室にはHBA floxマウス及びSox9 Creマウスが飼育されていることから、HBA floxマウスとSox9 Creマウス、または、K14-SCF:HBA floxマウスとSox9 Creマウスを交配し、これらの前者のマウスでは白髪、後者のマウスでは白髪およびアルビノになるか調べる。
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