研究課題
基盤研究(C)
現行の骨髄異形成症候群 (MDS)の予後予測システムには不十分な部分があり、MDS病態の分子基盤に基づく新規予後因子を含む、新たな予後予測システムの構築が課題となっている。本研究では、MDS幹・前駆細胞を用いて、ATAC-seqによるクロマチン特性解析とRNA-seq、遺伝子変異解析を行い、分子プロファイルを用いた機械学習により、臨床情報や予後の予測を行う。予測に高い寄与度を示す新規予後因子を抽出し、 in vitro、 in vivo機能解析を行うことで、MDS病態の包括的な分子基盤の解明と、新規予後予測システムの構築を行う。
MDS CD34+CD48±幹細胞分画を用いたATAC-seqの解析から、MDSにおけるクロマチン状態変化の多くは、正常な血球分化と関わりがあることが示された。そこでより詳細に検討するため、正常検体のCD34+CD48±幹細胞分画を、更にHSC、MPP、MLP、GMP、MEP、CLPに分けてATAC-seqを行い、正常な血球分化における詳細な転写因子ネットワーク制御プロファイルを構築して、MDSにおける転写因子ネットワーク異常と比較検討した。その結果MDS幹細胞分画では、HSC特異的に開くAP1及びHSC/MLPで開くHoxファミリー転写因子モチーフが閉じている一方で、GMP分化に特異的なCEBPが分化に先行して開いていることが明らかになった。一方でMDS前駆細胞分画では、CLP分化に関わる多くの転写因子モチーフが閉じていることが明らかになった。更にMEP分化に関わるKLFモチーフはMDS幹・前駆細胞どちらにおいても正常と比較して開いていることが示された。そこでATACピークシグナルを用いて正常幹細胞から前駆細胞への分化程度を0-1スケールで表すprogenitorスコアを定義し、MDS幹細胞のスコアを計算したところ、予後予測スコアIPSS-Mと有意に正の相関を示しており、更にMDS幹・前駆細胞におけるprogenitorスコアの差分を基準にMDSを二群に分けたところ、両者で生存期間に顕著な差が認められた。またMDS幹・前駆細胞両方における変動転写モチーフのスコアを用いてMDS検体のクラスタリングを行ったところ、転写因子ネットワーク変化により特徴的なサブグループに分かれることを明らかにした。これらの特徴的な変化は、同時に行った遺伝子発現解析では明確には示されず、ATAC-seqを用いた本研究により始めて明らかになった独自の知見であると言える。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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