研究課題
基盤研究(C)
難治性造血器腫瘍に対する同種造血細胞移植は根治療法として確立されてきたが、再発が成績向上の足かせとなっている。移植片対腫瘍(GVT)効果の標的として白血病抗原、マイナー抗原および不適合HLA抗原があるが、このうちHLA-DP不適合はGVHDを増やすものの、GVT効果もあること、さらに非血縁者間移植の70%でDP不適合が認められるため、これを標的とする治療法の開発を計画した。申請者はDP不適合移植後患者より樹立した細胞傷害性T細胞から取得したT細胞受容体遺伝子改変T細胞を開発しており、さらに抗体をHLA-DP抗原受容体とした新たな細胞治療製剤としてCAR-T細胞を開発することを目標とする。
白血病に対してHLA一致非血縁者間移植を受けた患者の7割に何らかのHLA-DP不適合が発生し、抗白血病効果(GVL)が誘導される。本研究では抗HLA-DPサブタイプ抗体導入CAR-T細胞による移植後白血病治療を目的としている。昨年度、蛍光を標識した抗原を用いてハイブリドーマをソーティングし、免疫に用いたHLA-DPB9A2分子に対して反応する2クローンが得られたため本年度はその培養上清の特異性をさらに検討した。その結果、他のHLAクラスII分子であるHLA-DRB1A1、HLA-DQB2A5およびHLA-DQB3A4に対しては反応せず、HLA-DPB9A2に対して中等度(コントロールに対して1 log陽性にシフト)反応を示したことから、特異性の高い抗体産生ハイブリドーマを得るためのシステムはほぼ確立できた。ただし臨床応用性に関しては、特異性は高いものの標的抗原に対する親和性はまだ十分とは考えにくく、ハイブリドーマの再調整が必要と判断した。今回、Fc受容体(CD64)強制発現ハイブリドーマ細胞上に産生された抗体をトラップしておき、蛍光結合標的抗原で標識してソーティングする系を開発したが、細胞癒合後に過半数のハイブリドーマがCD64を喪失する問題があった。これに対して癒合後も発現が比較的保たれやすいBCMA分子や組織適合性抗原H-2を足場にできないか検討した。抗BCMA抗体の既報配列、抗H-2Kd抗体産生ハイブリドーマHB-11の抗体遺伝子配列をもとに単鎖抗体を作成、これに蛍光蛋白またはFc受容体を結合したキメラ分子をデザインし、293Tで発現・分泌させたところ、一部のキメラ分子が細胞表面に結合すること確認した。今後ハイブリドーマをこのキメラ分子で処理し、細胞表面に分泌される抗体をトラップした後、蛍光結合抗原で標識してソーティングする系を確立する予定である。
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