研究課題/領域番号 |
21K08383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
森川 隆之 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (80465012)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 造血幹細胞 / 酸素 |
研究開始時の研究の概要 |
造血幹細胞 (HSC) 周囲の酸素環境はその幹細胞性において重要な因子のひとつであることが知られているが、HSCの存在する骨髄の酸素分圧の実態と、それがどのように形成・維持されているかは明らかでない。本申請課題では骨髄の生理的低酸素環境の実態を酸素分圧の生体イメージングにより明らかにし、骨髄で産生される血管作動性因子による局所酸素分圧調節のメカニズムを探る。さらにこの酸素分圧調節機構のHSCの遊走能の維持における役割について精査することで、骨髄の酸素環境の制御システムが造血を支える新たな一因子となりえるか検証する。
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研究実績の概要 |
2年目となる当該年度は、骨髄の酸素環境に大きく影響すると思われる骨髄血流の制御因子として、血管内皮細胞に発現する内皮型一酸化窒素合成酵素eNOSから産生される一酸化窒素 (NO) に着目した。まず定常状態の骨髄の血流におけるNOの役割を明らかにするため、NOS阻害剤L-NAMEを麻酔下のマウスの頭蓋骨骨髄に局所投与した時の血流変化を多光子レーザー顕微鏡を用いて検証した。その結果、骨髄の動脈の血管はNOSの阻害によって収縮し、またその下流の類洞血管の血流量が減少した。そこで骨髄におけるeNOSの血流維持における役割をより詳細に検討するため、eNOS遺伝子欠損マウス (eNOS KOマウス) の頭蓋骨骨髄の血流を野生型マウスと比較した。その結果野生型マウスと比べ、eNOS KOマウスの頭蓋骨骨髄の動脈径は小さく、類洞血管の血流は低下していた。さらにeNOS KOマウスの頭蓋骨骨髄にNOドナーとしてニトロプルシドを局所投与したところ、動脈径は野生型マウスとほぼ同等まで拡張し、また類洞血管の血流も改善を見せた。次にNOの骨髄の酸素環境維持における役割を検証するため、初年度に立ち上げた多光子励起りん光寿命イメージング顕微鏡 (PLIM) を使った麻酔下のマウス骨髄の定量的酸素濃度イメージングシステムを用いてNOS阻害時の酸素濃度を測定したところ、阻害前と比較してNOS阻害時の骨髄酸素濃度が低下した。これらの結果から定常状態において骨髄のeNOSは骨髄の動脈を拡張させることでその下流の類洞血管の血流を保ち、酸素環境の維持に貢献していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に検討を重ねた骨髄の抵抗血管、交換血管のそれぞれのマーカーを用いた骨髄の血流動態をリアルタイムに計測することのできるシステムを用い、骨髄の血流調節におけるNOの役割を探索すべくNO産生阻害時の抵抗血管、及び交換血管の血流を定常状態と比較した。内因性のNOの産生阻害にはNOSの阻害剤であるL-NAMEを用い、定常状態と比較してL-NAME投与時には抵抗血管である骨髄の動脈が収縮することを示す知見を得た。NOの産生源としては血管内皮細胞に発現するeNOSを候補として考えており、その発現をqPCR及び免疫組織染色で確認した。eNOSの骨髄の血流における役割を検討するためにはeNOS KOマウスを用い、eNOS KOマウスでは骨髄の血流が野生型マウスと比較して低下していることを示唆する知見を得た。さらにNOの骨髄内の酸素環境の維持における役割を検証するため、NO産生阻害前後の骨髄内酸素分圧のイメージング画像を比較し、NO産生阻害が骨髄の酸素濃度低下をもたらすことを示す知見を得た。このように、造血機能を適切に保つための重要な要素のひとつと考えられる骨髄の血流及び酸素環境が、NOによって維持されていること示唆するいくつかの証左を得るなどの進捗がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる3年度目は骨髄の造血幹細胞 (HSC) の挙動と、骨髄の酸素分圧の関連を明らかにすることを目的して研究を推進する。多光子レーザー顕微鏡下での骨髄内のHSCの可視化は、HSCが緑色蛍光蛋白 (GFP) を発現するEvi1-IRES-GFPマウスを用いる。先行研究及び多光子レーザー顕微鏡によるマウスの生体イメージングを用いた予備検討の結果から、HSCは定常状態の骨髄中で同一部位には留まってはおらず、常時盛んに位置を変えていることが明らかになりつつある。このHSCの動きをex vivoとin vivoにおいて酸素環境を人為的に操作しながら追うことで、HSC周囲の酸素濃度とその挙動の連関を精査する。HSCの動きと酸素の相関が認められる知見が得られ始めた場合において、その要因となるメカニズムの解明が課題となることが予想される。その対応策としてまず酸素を利用した酸化的リン酸化によって生じるATPに着目し、まずはATP依存的な細胞運動の分子メカニズムを軸として、NOにより維持されていることが示唆されている酸素環境とHSCの挙動の関係を明らかにして行く。
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