研究課題
基盤研究(C)
近年、新規の胚細胞・体細胞DDX41変異を有する骨髄系腫瘍が報告され、その多くの症例では、先天的にDDX41胚細胞変異を有し、対側アレルに体細胞変異を獲得することで骨髄系腫瘍を発症することが明らかとなった。これまでに申請者らは、DDX41変異に関するマウスモデルの解析を通じて、変異造血細胞では自然免疫伝達経路が細胞自律的に活性化し、造血不全を来すことを明らかにしたが、Ddx41胚細胞・体細胞変異を併せ持つ造血細胞がクローン選択を受ける分子病態については多くが不明である。本研究ではその分子病態を明らかすることを目指し、さらにはDDX41変異を標的とした新規治療法開発の可能性を検討する。
骨髄異形成症候群は血球産生および分化の異常による血球減少と、急性骨髄性白血病への移行を特徴とする腫瘍性疾患である。近年、晩発性の家族性骨髄性腫瘍患者検体の遺伝子解析を通じて、DDX41の機能喪失型の胚細胞変異が同定されたのに加えて、約半数の症例では、胚細胞変異を有するアレルの対側アレルに、セカンドヒットの体細胞変異(典型的にはp.R525H変異)が認められることが明らかになった。我々が作成したDdx41変異に関するマウスモデルの解析を通じて、Ddx41 R525H/nullマウスは骨髄不全をきたし、造血幹細胞では、RNA代謝、non-coding RNAやリボソーム生合成に関係する遺伝子の発現異常や、cGAS-STING自然免疫伝達経路が活性化を呈することを明らかにした。Ddx41変異マウスとStingノックアウトマウスとのダブル変異マウスでは、生存率や造血表現型の改善に一定の効果が認められた。Ddx41変異マウスから採取した骨髄細胞(ドナー細胞)と、コンペティター細胞(野生型またはDdx41 null/wt マウス由来の骨髄細胞)とを混合してレシピエントマウスに移植し、コンペティターのDdx41 null/wt骨髄細胞を対象としたシングルセルRNAシーケンス解析を行うことを通じて、ドナー細胞がDdx41 野生型, ヘテロノックアウト, ヘミノックインのいずれであるかの違いによって、大きく異なる細胞分化のパターンを示すことが明らかになり、Ddx41変異細胞による細胞非自律的な影響を裏付ける結果が得られた。本研究では、研究期間全体を通じて、病態を模倣するDdx41マウスモデルの解析を行い、変異により惹起される細胞自律的/非自律的な分子病態を明らかにし、DDX41胚細胞/体細胞変異を有する骨髄系腫瘍発症の分子病態の理解を深めることができた。
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