研究課題/領域番号 |
21K08399
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
植田 航希 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (80632190)
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研究分担者 |
池田 和彦 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90381392)
三村 耕作 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (90568031)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 骨髄増殖性腫瘍 / CALR / EZH2 / 急性骨髄性白血病 / JAK2 / ASXL1 / MDMX |
研究開始時の研究の概要 |
本邦において年間5000から6000人が新規に発症するMPNは、比較的高率にAMLに転化することが知られており、転化を認めた場合の予後は不良である。p53抑制因子であるMDMXは急性転化をきたした症例で高頻度に遺伝子増幅がみられることが報告されている。申請者らは、白血病発症においてMDMXのp53依存性・非依存性機能が重要な役割を果たしていることを、Mdmxトランスジェニックマウスモデルを用いて明らかにしてきた。このマウスをMPNモデルマウスと交配し、MPNからAMLへと進行する急性転化モデルを樹立する。さらに、MDMX阻害剤を用いて、急性転化を阻止する治療モデルを確立する。
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研究実績の概要 |
当初は、骨髄増殖性腫瘍(MPN)のドライバー変異のうちで最も多いJAK2の変異マウスを用いた解析を計画していたが、JAK2変異マウスはMPNの表現型が強く、早期に死亡してしまうため、AMLへの進行を観察するのが困難だった。我々が樹立した、MPNのドライバー変異として2番めに多いCALR変異を持つマウス(Calr-10d)は、単独では軽症のMPN表現型(軽度の脾腫、白血球のmyeloid skew、骨髄の造血幹・前駆細胞分画(LSK)でJAK-STAT系の亢進)を認めるのみで、生存期間は野生型と有意差を認めない。よって、他の遺伝子変異が加わることでMPNからAMLへ進行するlinear modelとして使用するのに適している。そこで、JAK2に変わってCALR変異マウスを用いることにした。 MPN患者に高頻度に発生し、予後不良因子として報告されているEZH2の機能喪失型変異を再現するEzh2-/-マウスとCalr-10dマウスを交配して病態の変化を観察した。Calr-10d;Ezh2fl/flマウスに対して、生後数ヶ月でタモキシフェンを投与してEZH2を欠損させた。Calr-10d;Ezh2+/+およびCalr-WT;Ezh2-/-マウスでは20ヶ月以内に死亡するマウスは稀であったが、Calr-10d;Ezh2-/-マウスは生後1年以降死亡するマウスが多く、死因の多くは重症MPNであったが、一部は骨髄細胞サイトスピンで芽球の増生を認め、AMLを発症していると考えられた。AMLを発症していると考えられるマウスの骨髄を二次移植されたレシピエントマウスは短期間で死亡した。Calr-10d;Ezh2-/-マウスにおいてMPNの重症化のみで死亡するマウスとAMLを発症するマウスが存在するのは、おそらくAML発症には更なる遺伝子変異などに起因するシグナル異常が必要だからであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨髄増殖性腫瘍からAMLへ進行するマウスモデルの樹立に成功した。今後、AMLへの進行をきたしたマウスの造血幹細胞分画における付加的遺伝子変異や発現異常の解析につなげることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在我々はCalr-10d;Ezh2-/-マウスおよびCalr-10d/Ezh2+/+マウスの造血幹・前駆細胞のRNAシークエンスなどにより、Ezh2欠損がCalr変異クローンの増殖優位性獲得に及ぼす作用の全容解明、AML発症には更にどのようなシグナル異常が必要であるかの検証を行っている。さらに、AML発症にはCalr-10dとEzh2欠損に加えて新たな遺伝子変異が必要であるという仮説を検証するため、実際にMPNから二次性AMLを発症した患者で急性転化の最終段階で高頻度に生じる遺伝子異常(NRAS変異やMDMX過剰発現)が加わることでより短期間・高頻度にAMLを発症するか否かを検証している。またEzh2-/-マウスに代わって、EZH2機能喪失型変異と並ぶMPNにおける予後不良因子であるASXL1変異を持つマウスを用いた実験も行っている。
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