研究課題
基盤研究(C)
3番染色体の逆位・転座(inv(3)/t(3;3))を有する骨髄系腫瘍は高率に7番染色体の欠失(-7)を合併し、両者を有する患者は極めて予後が悪い。しかしinv(3)/t(3;3)と-7が如何に協調して予後不良な白血病を発症させるのか、分子基盤は不明である。本研究では、t(3;3)と-7を有する新規白血病細胞株YCU-AML1を応用し、inv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病が強力な抗がん剤耐性機構を有するのかを明らかにし、その分子基盤の解明を進める。本研究の成果は、inv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病に特徴的な抗がん剤耐性機序の解明と新たな治療法の開発に繋がると期待される。
初年度の研究からinv(3)/t(3;3)のみを有する細胞に比べinv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病細胞の方が抗がん剤シタラビンへの耐性を示すという仮説は成立しないことが判明した。昨年度inv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病細胞特異的に薬剤感受性を示す化合物を探索するためにTocriscreen 2.0を用いて解析したところ、EZH2に対する阻害剤がinv(3)/t(3;3)と-7を有するYCU-AML1とOCI-AML20に特異的に高い感受性を示すことが確認された。In vitro培養系を用いて、EZH2阻害剤を培養液に添加して増殖曲線を解析した結果、YCU-AML1、OCI-AML20及びUCSD-AML1では細胞増殖が阻害剤添加により有意に抑制されたのに対して、Mono-7とKasumi-3では増殖は抑制されなかった。以上からEZH2阻害剤はinv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病細胞特異的に増殖抑制効果を発揮することが示された。アポトーシス解析では、EZH2阻害剤存在下で培養した細胞ではコントロールに比べてAnnexin V+分画の有意な増加を認めたのに対して、増殖期にあるDAPI+ Ki67+分画の減少は認められなかった。以上からEZH2阻害剤はYCU-AML1、OCI-AML20に効率的にアポトーシスを誘導することが示された。本年度はこれらの白血病細胞においてEZH2阻害がアポトーシスを誘導する分子経路を明らかにするため、RNA・CUT&Tagシーケンスを実施した結果、GADD45g-p38-p53経路の活性化がアポトーシス誘導に必須の役割を担っていることが判明し、定常状態ではinv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病細胞はエピゲノム制御によるGADD45g-p38-p53経路の抑制によりアポトーシス回避を誘導することが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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