研究課題/領域番号 |
21K08426
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
太田 明伸 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30438048)
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研究分担者 |
武井 則雄 北海道大学, 医学研究院, 助教 (50523461)
花村 一朗 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70440740)
シバスンダラン カルナン 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30557096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 多発性骨髄腫 / PBK / 治療標的分子 / セルベースアッセイ / 分子病態 / 創薬 / ノックアウトマウス |
研究開始時の研究の概要 |
多発性骨髄腫(骨髄腫)は、多様なDNAの異常が病気の発症・進展に関わる難治性疾患である。本研究ではPDZ-binding kinase (PBK)を標的とした創薬を目指すために、PBKノックアウトマウスの表現型解析、薬剤スクリーニングによるPBKを標的とした新たな化合物の探索、新規MM悪性化分子の機能解析をおこなう。さらに、PBK阻害剤による抗腫瘍効果の解析と、次世代シーケンサーによる遺伝子(発現)異常の解析をおこなうことにより、PBKと骨髄腫の分子病態との連関を解明する。本研究は、難治性骨髄腫の新たな分子病態の解明に基づいた創薬を主眼としており、その波及効果は極めて高い。
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研究実績の概要 |
多発性骨髄腫(Multiple myeloma, 以下MM)は形質細胞由来の難治性血液悪性腫瘍である。MMの臨床病態は多彩であり、治療やその効果の予測は難しい。代表者は、MM治療の標的となりうる分子を同定するために、ゲノム編集法や遺伝子発現解析法を用いて新規予後不良因子としてPDZ-binding kinase(以下PBK)を発見した。本研究では、PBKノックアウトマウスを用いた生理学的機能の解明、PBK関連分子の同定、新たな作用機序を有する新規治療薬の創出を目指す方針とした。 PBK遺伝子破壊(PBK-KO)マウス組織を用いた包括的遺伝子発現解析によって、PBKの破壊ががん遺伝子の活性を低下させることを見出した。当該がん遺伝子は生理的な代謝活性に対して寄与することも知られており、PBKが生体内で代謝機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。 また、昨年度に公共のデータベース等を利用したサブ解析から、新規遺伝子X(仮称)を見出した。本年度は、ゲノム編集法によって樹立したFLAGタグノックイン細胞株とZenoTOF7600を用いた高感度質量分析によって、遺伝子Xとタンパク間相互作用を示すDNA組み換え修復関連遺伝子Yの同定に成功した。インビトロにおけるゲノム編集効率評価法を用いてDNA修復能を解析した結果、遺伝子Xを破壊したがん細胞では二本鎖DNA切断後に誘導される相同組換え効率が顕著に減少し、X-Yの相互作用はMM細胞の生存率に寄与する可能性が高いと結論付けた。 さらに、1500個の阻害剤ライブラリーを用いた薬剤感受性試験の結果、PBKの高発現は、レナリドミドを含む免疫調節剤投与後の細胞生存率に寄与することから、PBKはMM細胞の薬剤耐性機構に関与する可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1500個の化合物ライブラリーを用いた薬剤感受性試験によって、PBKが抗骨髄腫薬の感受性に影響を及ぼすことを見出した。また、PBKの発現レベルと高い相関性を示す遺伝子X(仮称)と相互作用する分子の同定に成功しており、骨髄腫の分子病態に関する論文を投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、新規MM悪性化候補分子Xの同定とその機能解析に関わる論文の投稿準備、論文投稿、論文公表を行う。また、本研究の知見を新規治療薬の創出研究に発展させるために、近年注目されているPROteolysis TArgeting Chimeras(PROTAC)、Degronimid、Specific and Nongenetic IAP-dependent Protein Eraser(SNIPER)といったユビキチン・プロテアソーム系を活用して標的とするタンパク質を分解する治療戦略への応用検討する。 PBKノックアウトマウスでは野生型と比べ代謝レベルの変化が見られることから、血中のホルモン動態の解析を行う予定としている。また肝臓や膵臓における組織観察を行い、ホルモン分泌細胞や肝組織像の解析を予定している。 さらに、阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニング試験結果を検証するために、様々なMM細胞を用いて、PBKのノックアウト安定株やPBKの過剰発現安定株の作成をおこなう。樹立した細胞株を用いて、インビトロの細胞生存率アッセイやxenograft(in vivo)実験を行い、PBKが抗骨髄腫薬の抗腫瘍効果に及ぼす影響を解析する。
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