研究課題
基盤研究(C)
IgG4関連疾患における三次リンパ組織の役割については、リンパ濾胞が多数認められる涙腺や唾液腺病変に関して注目されていたが、リンパ濾胞の形成がほとんど認められない腎臓に着目した研究はなく意義不明であった。我々は、早期のIgG4関連腎臓病患者の腎摘出標本から、早期の腎病変進展もリンパ濾胞形成から始まることを見出した。本研究では、IgG4関連疾患の典型臓器病変の一つである腎病変において、病変進展と線維化促進に関与するリンパ濾胞の役割に着目し、リンパ濾胞内でのB細胞と線維芽細胞のクロストークの結果として起こる花筵状線維化形成機序をヒトの病理標本及びLat Y136Fマウスを使って解明する。
IgG4関連疾患における三次リンパ組織(リンパ濾胞: TLT)の役割については、リンパ濾胞が多数認められる涙腺や唾液腺病変に関して注目が集まっており、発症機序に関する基礎的研究が行われている。しかしながら、リンパ濾胞の形成がほとんど認められない腎臓に着目した研究はなく意義は不明である。本研究では、ヒト腎生検組織及びIgG4関連疾患モデルマウスを用いて、本疾患の典型臓器病変の一つである腎病変における病変進展と線維化促進に関与するリンパ濾胞の役割を明らかにする。1.ヒト腎臓病理組織標本を用いたTLTの形成頻度の検討:ヒトIgG4関連尿細管間質性腎炎(IgG4-TIN)13例、コントロール11例(特発性間質性腎炎6例、薬剤性間質性腎炎3例、シェーグレン症候群の間質性腎炎1例、サルコイドーシスの間質性腎炎1例)に免疫染色を行い、TLTの形成に差があるかを比較検討した。TLTは、「Ki-67陽性細胞を含むCD20陽性細胞とCD3陽性細胞の密な集簇」と定義した。IgG4関連尿細管間質性腎炎のadvanced stage TLTは単位面積当たり0.27(IQR 0.09-0.48)であり、コントロール群の0.00 (IQR 0.00-0.07)に比して有意に多かった(p=0.028)。さらに、IgG4-TINにおいて、advanced stage TLTの単位面積あたりの数はstoriform fibrosis の形成の程度と有意な性の相関を示した(p=0.007, R2=0.67)。2.IgG4-RDの動物モデルであるLat Y136F変異マウスにTLT産生誘導の刺激を加えることによるIgG4関連尿細管間質性腎炎及び線維化形成機序の検討:IgG4-RDの動物モデルとしてLat Y136F変異マウスを用い、TLTを誘発する刺激として、片腎虚血再灌流による急性腎傷害誘発モデル、アデニンを用いた間質性腎炎誘発モデル(アデニン腎炎モデル)をそれぞれ5匹作成した。しかしながら、コントロールのLat Y136F変異マウスと比較してTLT形成を誘発する事はできなかった。
4: 遅れている
やっとLat Y136F変異マウスが実験に必要な数だけ生まれ、片腎虚血再灌流による急性腎傷害誘発モデル、アデニンを用いた間質性腎炎誘発モデル(アデニン腎炎モデル)をそれぞれ5匹作成したが、当初の想定に反して三次リンパ組織の形成率は、何も処置していないLat Y136F変異マウスと比較して差が認められなかった。理由として、Lat Y136F変異マウスの寿命が短いこと、片腎虚血再灌流による急性腎傷害誘発モデル、アデニンを用いた間質性腎炎誘発モデル(アデニン腎炎モデル)によるTLT形成には加齢の要素も重要であることから、今回、うまくいかなかった可能性が考えられた。現在、Lat Y136F変異マウスを用いた新たな研究計画を考案中である。
現在、Lat Y136F変異マウスを用いた新たな研究計画を考案中である。
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