研究課題/領域番号 |
21K08509
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
渡部 匡史 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60634326)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ヒトヘルペスウイルス / カポジ肉腫ヘルペスウイルス / ウイルス性転写開始前複合体 / タンパク質構造予測アルゴリズム / がんウイルス / ヘルペスウイルス / 近位依存性標識法 / AlphaFold2 / カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス / Deep-learning / Alphafold2 / ウイルス複製 / 宿主性因子 / ウイルス遺伝子発現機構 |
研究開始時の研究の概要 |
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスの複製に不可欠な分子機構として,ウイルス性・宿主性因子から構成される”ハイブリッド複合体”だと想定されるウイルス性転写開始前複合体(vPIC:viral Pre-Initiation Complex)が存在する.vPIC全体構成要素や動作機序の解明はウイルス複製阻害薬の創薬標的の発見につながりうる.そこで近位依存性標識法によるプロテオーム解析によりvPIC宿主性因子を同定し,複合体機能への関与を検証する.並行して各ウイルス性vPIC因子のアミノ酸レベルでの詳細な機能解析と,分子立体構造情報とを統合し,得られた知見にもとづきウイルス複製阻害薬のシーズを探索する.
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研究実績の概要 |
新規近位依存性標識法を用いた宿主性vPIC相互作用因子の同定については,ビオチン化酵素タグを付加したvPIC因子が,タンパク質としての機能を維持している細胞株の樹立などが,進行の障壁となった.繰り返し試行や条件検討するとともに,代替方策の準備を進めている. ウイルス性vPIC因子の機能性領域の同定については,vPICのハブとして機能しうるORF34に着目し解析を進めてきた.既にプレプリントサーバBioRxiv上で公開しているが(Watanabe T. et al., bioRxiv., 2023 doi: 10.1101/2023.03.08.531831),再投稿に向けてクロマチン免疫沈降を中心とした追加実験に取り組んだ.すでにデータは取得しており,原稿改訂に取り組んでいる. また,ORF34分子構造解析の際に利用したAlphaFold2による予測構造モデルの構築ノウハウを転用し,3種のウイルスタンパク質から構成されているKSHVターミナーゼ複合体の構造モデル,ならびにデングウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼとHCV治療薬として知られている低分子化合物ソホスブビルとのドッキングモデルを,それぞれ構築し解析した.これらの内容に関しては,それぞれ原著論文として受理された(Iwaisako Y. et al., J. Virol., 2023; Kurosawa M. et al., Int. J. Mol. Sci. 2024).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ビオチン化酵素タグとして,Mini-TurboタグとAPEX2タグの2種類を準備した.それぞれについて,ORF34欠損ウイルス産生/ビオチン化酵素タグ付加ORF34定常発現細胞,ORF66欠損ウイルス産生/ビオチン化酵素タグ付加ORF66定常発現細胞を樹立した.これらについて標的タンパク質へのタグ付加による機能阻害が起きていないか,またタグによって十分なビオチン化が生じているか検討を続けている. ORF34の機能性領域の同定に関しては,前年度投稿した原著論文の追加実験に取り組んだ.昨年度までに計18種類のORF34点変異体を用いて,他のvPIC因子(ORF24, ORF66)との結合能,ウイルス産生量,ウイルス後期遺伝子発現量,タンパク質構造予測アルゴリズムAlphafold2によるORF34構造予測モデル中の配置を照合し,ORF34のC末端側に存在する4つの保存システイン残基はCxxCモチーフを介したイオン補足によるドメイン構造維持に重要だと推測していた.クロマチン免疫沈降により,これら4つの保存システイン残基の点変異体が,ORF34のウイルス後期遺伝子転写開始領域へのリクルートに寄与していることが示唆された.また,ORF34のN末端側領域はvPIC因子との結合には直接関与しないがその機能発現に必須な部位であることが推測されていた.この領域に含まれるORF34点変異体の多くがリクルート量の顕著な低下を示さなかったことから,複合体形成以外の制御にORF34N末端領域が関与していることも示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
ビオチン化酵素タグvPIC因子コード領域にビオチン化酵素タグ核酸配列を挿入したKSHV BACクローンの構築にも取り組んでいく.あわせて近位依存性標識法によるビオチン化タンパク質の分離・精製の実験手法も確立していく.しかし昨年度,UC. Berkleyの研究チームからタグは異なるものの同じ標識系を用いたvPIC相互作用因子に関する解析結果が公開されているため,検出系の高感度化や観測条件の差別化を図る予定である. また,他のヘルペスウイルスタンパク質に関する知見から,vPIC中でもORF34ホモログによる複合体サブセット形成について報告がある.これらと我々のvPIC因子の機能性領域に関する独自の解析結果,とくにN末領域とC末領域の複合体形成ならびに機能発現における特徴差がどのように関わっているのか,興味深い課題であると考えている.さらに構造予測モデルを解析した今までの知見から,比較的小さなサイズのウイルス性タンパク質も複合体形成に必須であることが示唆されている.これらの構造に基づいた阻害性ペプチドをデザインできるか検討したいと考えている.
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