研究課題/領域番号 |
21K08525
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中條 大輔 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (30640528)
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研究分担者 |
戸邉 一之 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (30251242)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 1型糖尿病 / 自己免疫 / T細胞 / 樹状細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
1型糖尿病は自己免疫によってインスリンを分泌する膵β細胞が破壊されることによってインスリン分泌が極度に低下し高血糖となる疾患である。他の自己免疫疾患と異なり免疫を制御する治療法が確立されておらず、自己インスリンが枯渇すると重症の低・高血糖に陥り易くなるため、自己インスリンを保持させるために自己免疫を制御する治療法の開発が望まれている。この研究では、(1)1型糖尿病発症に関連する免疫反応を明らかにし、(2)その免疫反応を患者自身の免疫細胞を用いて制御する方法を試験管内で試み、自己インスリンを維持させるための新たな免疫療法を開発する基盤とする。
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研究実績の概要 |
1型糖尿病は細性性免疫による膵ベータ細破壊を主因とした自己免疫疾患であるが、膠原病等と異なり、成因である自己免疫を制御する治療法が確立されていない。そこで本研究では、申請者が行ってきた1型糖尿病患者の膵島抗原特異的細胞性免疫反応のデータをもとに、(1)1型糖尿病発症における責任抗原エピトープを明らかにし、(2)患者ごとの責任抗原エピトープで教育した自家樹状細胞を用いて膵島抗原特異的病原性T細胞の活性を制御することを試みることを目的に解析を進めている。 2022年度は、2021年度にアッセイを確立して開始した日本人1型糖尿病患者における責任抗原エピトープを同定するための解析を継続した。主に膵島抗原特異的Th1反応が亢進していることが想定される急性発症1型糖尿病患者を対象に、膵島抗原ペプチド(単ペプチド)で末梢血単核球患者(PBMC)をIL-2存在下で刺激・培養し、フローサイトメトリーにてサイトカイン産生T細胞の割合を解析している。昨年度の極少数例での試験的解析では、GAD65抗原のアミノ酸配列:115-127部位がエプトープ候補として挙げられたが、これに加え今年度実施した本解析では、GAD65抗原のアミノ酸配列:247-266部位の刺激に対するTh1反応の亢進が多数例で見られ、これをより有意な責任抗原エピトープと判断した。また、プレプロインスリン抗原に対するT細胞エピトープの同定も進めており、2つのエピトープが候補として挙がっている。 今後は、同定した責任抗原エピトープを用いて(2)の免疫制御の試みを進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析には共同研究機関が保有する機器を使用する必要があるが、初年度(2021年度)に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で他県への移動が制限されていた影響で、予定よりも解析が遅れていた。2022年度もその影響が残った状態で解析を進めていたため、研究期間全体としてやや遅れた状態が続いている。 また、2022年度にフローサイトメーターの故障が発生し、大掛かりな修理が必要となったため、その影響も研究の遅延に影響を及ぼした。
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今後の研究の推進方策 |
1型糖尿病発症における細胞性自己免疫反応を司る責任抗原エピトープを同定されつつあり、次のステップとして症例ごとの責任抗原エピトープで教育した自家樹状細胞を用いて、膵島抗原特異的病原性T細胞の活性を制御するためのアッセイを実施する。このアッセイでは、患者PBMCから単離したCD14陽性単球に種々のサイトカイン等を加えることで制御性樹状細胞を作成する。さらに、責任抗原ペプチドで教育した制御性樹状細胞でCD4陽性T細胞を刺激することで、細胞性免疫反応の制御を試みる。今後は、海外への渡航が可能となったため、制御性樹状細胞の効率的な培養手法を習得するために海外の先端研究施設への訪問も検討する。 1型糖尿病に対する患者個々の責任抗原エピトープを用いたテーラメイド自家免疫細細胞療法の開発は世界でも前例がなく新しい試みである。本研究が発展し臨床応用に至れば、患者の内因性インスリン分泌の保持を介して、発症時や膵島移植後の1型糖尿病患者のQOLを劇的に改善させ、根治療法や予防的介入法の開発に向けて大きな一歩となり得ると考えられる。
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