研究課題
基盤研究(C)
緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)患者の膵におけるエンテロウイルス(EV)感染を自然免疫と持続感染の面から検討し特徴的なウイルスと宿主の相互関係を明らかにする。さらに、SPIDDMの成因となるウイルスの種の同定と具体的なRNA配列を明らかにすることにより、糖尿病の予防のためのウイルスワクチン、治療にための抗ウイルス薬の開発を促す成果を得る。
緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)は、1型糖尿病のサブタイプである。しかしその成因と関係するウイルスの研究は全くない。我々は剖検時に採取された膵組織を用いてエンテロウイルス(EV)の感染および宿主の自然免疫能を検討した。まずSPIDDM膵でのEVと自然免疫センサーであるMDA5およびToll-like receptor4との関係を罹病期間別にその 発現状態を定量化した。膵島内のMDA5、1型インターフェロン(IFNb1)の発現は罹病期間とともに低下し、EVが 増加する成績を得た。さらにEVが産生するプロテアーゼ2AがIFNb1発現を抑制し、持続感染を起こすものと考えられた。
EVの持続感染がSPIDDMでβ細胞の破壊と炎症、そして膵管のPanIN病変、IPMN病変、慢性膵炎に進展する可能性を考え、本研究を企画した。SPIDDMは他のサブタイプ(劇症、急性発症型)と比較してその発症頻度が高く、β細胞の残存も高頻度であり膵に感染するウイルスの分子レベルの情報を知ることでSPIDDMの病因が明らかになるばかりでなく、最終的には本疾患の進展阻止、予防にも貢献するものと考える。
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