研究課題/領域番号 |
21K08543
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
森 健二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究室長 (00416223)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 生理活性ペプチド / ペプチドホルモン / 神経ペプチド / 受容体 / 生理活性物質 |
研究開始時の研究の概要 |
ペプチドホルモンや神経ペプチドに代表される生理活性ペプチドは、細胞間の情報伝達を担う主要な分子の1つであり、生体の制御及び恒常性維持において重要な役割を果たしている。よって、新しい生理活性ペプチドの同定とその作用機序を含めた機能解明により、未だ知られていない生体制御機構を新たに提唱することができる。本研究では、これまでに複数の生理活性ペプチドを発見してきた知見に基づき、新たな生理活性ペプチドの同定を試みるとともに、これまでに同定した強力なプロラクチン分泌促進活性を持つ生理活性ペプチドついて受容体を含めた作用機序と機能を明らかにすることにより、これらが関与する新しい生体制御機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
ペプチドホルモンや神経ペプチドに代表される生理活性ペプチドは、細胞間の情報伝達を担う主要な分子の1つであり、内分泌的調節だけでなく摂食、飲水、性行動及び睡眠覚醒などの本能行動や、生体の恒常性を維持するための自律機能を調節するなど、生体の制御及び恒常性維持において重要な役割を果たしている。このため、未だ知られていない生体制御機構を明らかにするために、新しい生理活性ペプチドの探索や発見できた生理活性ペプチドの機能解析研究が現在でも盛んに実施されている。 これまでに、リガンドが不明なオーファンGPCRをCHO細胞やHEK293細胞で発現させて、そのアゴニスト活性を組織抽出物から見出すことにより、新たな生理活性ペプチドを同定した。その過程において、ラット心房から抽出したペプチド画分にHEK293細胞でのcAMP産生を誘導する活性が含まれることを見出している。このcAMP産生誘導活性のゲルろ過クロマトグラフィーにおける分子量や陽イオン交換クロマトグラフィーにおける保持時間を検討したところ、既知の生理活性ペプチドとは異なる物性を持つことが明らかになり、未知の生理活性ペプチドの存在が示唆された。そこで、高速液体クロマトグラフィーを駆使した複数回の精製によりこの活性を有するペプチドを精製したが、純度や収量の低さが原因となり構造決定には至らなかった。しかしながら、ラット心室にも同様の活性が認められたため、精製と構造解析を実施した。 また、これまでに新しい生理活性ペプチドとしてNMU precursor-related peptide(NURP)を同定し、興味深い生物活性を有することを示してきた。このNURPについて、その受容体探索を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
140gのラット心室からHEK293細胞でのcAMP産生を強力に誘導する約2ピコモルのペプチドを単一に精製した。このペプチドは、ゲル濾過クロマトグラフィーにて分子量約3,500~4,000付近に溶出され、陽イオン交換クロマトグラフィーにおいて既知のcAMP産生誘導生理活性ペプチドとは異なる保持時間を持つことから、未知の生理活性ペプチドである可能性が示唆された。このため、精製したペプチドの構造解析を実施した。質量分析にて明らかにした精製ペプチドのmonoisotopic massは3,784.947であり、既知の生理活性ペプチドのそれらとは一致しなかったが、この値はラットαCGRPのmonoisotopic massである3,803.010より18.063だけ小さかった。このため、精製ペプチドはラットαCGRPの脱水型である可能性が浮上した。しかしながら、脱水となる翻訳後修飾は知られていないため、ラットαCGRPのアミノ酸配列をもとに考察したところ25番目のアスパラギン酸残基がアスパルチミドを形成していると考えられた。アスパルチミド形成は、アスパラギン酸残基の直後がグリシンやアスパラギンの場合に効率よく誘導され、この条件はラットαCGRPの配列と一致する。また、アスパルチミドを形成することでアスパラギン酸残基の持っていたカルボキシル基が失われるため、脱水型ラットαCGRPは陽イオン交換クロマトグラフィーにてαCGRPより遅れて溶出されうるが、これは精製したペプチドの挙動と一致する。以上のことから、精製したペプチドは脱水型ラットαCGRPであると考えられた。この脱水型αCGRPは、最大効力がαCGRPよりも有意に大きかったため、今後そのメカニズムを検討することは興味深いと思われる。 NURPについては、オーファン受容体を用いた受容体探索により有力な受容体候補を見出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、ラット心房および心室に含まれるHEK293細胞でのcAMP産生を強力に誘導する新規生理活性ペプチド候補は脱水型αCGRPであることを明らかにした。これとは別に、ブタ胎盤にもHEK293細胞でのcAMP産生を強力に誘導する活性が存在することを見出している。現在ではこの活性が動物種にかかわらず存在することを示しており、また逆相HPLCでの溶出位置から新たな生理活性ペプチドに由来する活性ではないかと推測している。そこで、この活性の精製と構造解析を実施する予定である。 NURPについては、受容体候補について詳細な薬理学的解析を実施するとともに、その候補の体内分布なども検討することで、NURPの受容体としての可能性を検討する。また、NURPの新たな機能についても検索する。
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