研究課題/領域番号 |
21K08577
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
南茂 隆生 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師 (50594115)
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研究分担者 |
小澤 純二 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座准教授 (80513001)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 遺伝・環境相互作用 / 肥満 / 2型糖尿病 / エピゲノム / ゲノム塩基配列 / 疾患感受性遺伝子 / マウス / クロマチン修飾因子 / 疾患感受性座位 / エクスポソーム / 遺伝素因 / 膵β細胞株 / 薬剤スクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
2型糖尿病(T2D)には成因に則した治療法が必要である。私達は、リスク環境下に飼育した自然発症T2DモデルKKマウスの膵島において、塩基配列多型に富む数千箇所のゲノム領域が特異なエピゲノム変化を示すことを見出した。近傍には膵β細胞機能上重要な遺伝子、T2Dとその関連疾患(高血圧・肥満)の疾患感受性遺伝子が豊富に存在しており、遺伝環境相互作用の関与が示された。本研究では耐糖能異常ヒト膵島のエピゲノム検討も行い、特異変化の背景となる塩基配列を同定する。また、ゲノム編集技術によりこの塩基配列を導入したT2Dモデルβ細胞を作製し、in vitroの系における病態解明と創薬スクリーニングの実現を目指す。
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研究実績の概要 |
2型糖尿病はありふれた多因子疾患の一つであり、遺伝素因の関与が想定される。近年、ゲノムワイド相関解析(GWAS)によって、多数の遺伝素因が主に非コード領域における一塩基多型(SNP)として同定された。しかし、個々の遺伝因子の効果は小さく、意義の検討がさらに進められている。 KKマウスは近交系2型糖尿病モデルとして知られている(Proc Japan Acad. 38:348-352, 1962.)。消化のよい粉末飼料や高脂質食の摂取に加え、孤立状態で飼育すると発症が促進されるなど、ヒト2型糖尿病と類似点がある(J Takeda Res Lab. 30:307-313, 1971.)。私達は、環境因子がエピゲノムに及ぼす影響を調べるために、活性のあるプロモーター・エンハンサーのマーカーであるヒストン修飾H3K27acに着目した。単独飼育による糖尿病発症初期において膵島を単離してChIP-Seqを行い、単独飼育群と群飼育群(対照)の網羅的な比較を行ったところ、単独飼育群におけるH3K27acの減少は、一塩基多型(SNV)やindelが豊富なゲノム領域に起こりやすいことが判明した。そこで、これら多型の機能的意義を調べるために、より詳細な検討を行った。KKマウスのSNV・indelは、H3K27ac領域内と比較して、H3K27ac領域外に有意に高頻度に分布していた。ところで、既報(Nature. 518:317-330, 2015.)においては5種類のヒストン修飾(H3K4me1、H3K4me3、H3K36me3、H3K9me3、H3K27me3)によって非コード領域の機能的な意義付けが可能であるとされている。これらの検討も加えたところ、KKマウスのSNV・indelはいずれのマーカーも欠如しているようなゲノム領域に最も高頻度に分布していることが明らかとなった(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
私達は、KKマウス膵島において単独飼育によりH3K27acが減少することの重要性を見出した。しかし、H3K27ac領域内において、塩基多型が重要転写因子の結合配列と重複していることは稀であり、異なったメカニズムが関与する可能性を昨年度の本報告書において述べた。GWASによって同定された様々な疾患の感受性多型は、上述のヒストン修飾(H3K4me1、H3K27ac、H3K4me3、H3K36me3)に特徴付けられる領域により多く分布することが報告されている(Nature. 518:317-330, 2015.)。この点を踏まえると、KKマウスで観察された環境因子によるエピゲノム変化と塩基多型の関連性については、従来の想定にとどまらないメカニズムの存在が示唆されている可能性がある。詳細な追加検討には時間を要したが、2型糖尿病に関するエピゲノム変化の検討には新たな着眼点を導入する必要性が示され、結果として研究の効率的な遂行に貢献して行くことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度と比較して、環境因子によるエピゲノム変化を司るクロマチン修飾因子の分子メカニズムの理解が進展しつつある。これによって、標的とすべき塩基配列候補の選択がより適切に行えるものと考える。引き続き、クロマチン修飾因子の機能抑制実験や機能獲得実験を進めつつ、標的塩基配列に対するゲノム編集実験を行っていく。また、ヒトサンプルを用いた検討を行い、分子メカニズム理解のためにエビデンスを加えていく。
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