研究課題/領域番号 |
21K08580
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本屋 武 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (50760013)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Trk-fused gene (TFG) / 脂肪細胞 / 甲状腺ホルモン / 脂肪酸合成 / 熱産生 / PPARγ / 糖・脂質代謝 / 脂肪肝 / 細胞内小胞輸送 / 神経変性疾患 / 神経筋接合部 / 翻訳後修飾 / 発現調節機構 |
研究開始時の研究の概要 |
Trk-fused gene (TFG) は小胞体からGolgi体へのCOPII小胞輸送に重要な役割を担うことが最近明らかになってきたタンパク質である。我々はTFGの糖・脂質代謝制御における役割に着目し研究を行っており、KOマウスを用いた検討から脂肪細胞でTFGを欠失すると過栄養に伴う脂肪組織の増大が障害され脂肪肝になること、また肝細胞でTFGを欠失すると肝脂肪蓄積が増加することを見出している。本研究ではTFGによるCOPII小胞輸送や翻訳後修飾への影響に特に着目し、その分子機序の解明を目指す。また栄養状態によってTFGの発現量が変化する仕組みについて明らかにすることも本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
Trk-fused gene (TFG) は小胞体からGolgi体へのCOPII小胞輸送に重要であること、またその遺伝子異常がいくつかの神経変性疾患の原因となることが、近年明らかとなってきた分子である。我々はTFGの代謝制御における役割に着目し、各臓器特異的TFG KOマウスの表現型解析を介して、代謝におけるTFGの機能解明を試みており、これまでに膵β細胞の増殖およびインスリン分泌における重要性 (Sci Rep. 2017) や、骨格筋TFGが神経筋接合部の形成 維持に寄与する可能性 (Sci Rep. 2022) について報告してきた。 2023年度は主に脂肪細胞におけるTFGの役割について、検討を行った。脂肪細胞特異的TFG KOマウスの鼠径部皮下脂肪 (scWAT) ではPPARγ標的遺伝子、de novo lipogenesis (DNL) 関連遺伝子、熱産生関連遺伝子の発現が顕著に低下する。しかし、scWATから単離したstromal vascular fraction (SVF) を脂肪細胞に分化後にTFGを欠失させても、これらの表現型は認められない。そこでin vivoでのみ存在する何らかの因子が介在している可能性を考え、検討を行った。 脂肪細胞において交感神経シグナルと甲状腺ホルモンが協調的に作用することでUcp1やFasn, AclyなどのDNL関連遺伝子の発現が制御されていることが知られており、交感神経刺激や甲状腺ホルモンへの応答性に着目し検討を行ったところ、脂肪細胞特異的TFG KOマウスでは甲状腺ホルモンに対する応答性が障害されており、その結果DNL関連遺伝子やUcp1の発現が低下していることが明らかとなった。 以上の結果を論文としてまとめ、投稿し、最近論文掲載に至った (PNAS Nexus. 2024)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は脂肪細胞におけるTFGの役割について、検討を進め、論文投稿を行い、PNAS Nexus誌への掲載に至ることができた。 その過程で少なくともin vivoでは甲状腺ホルモンによりTFGの発現が制御されていることが判明し、TFGの発現制御機構についても知見が得られたことも大きい。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間延長を承認頂いたので、2024年度は肝細胞におけるTFGの役割、およびTFG発現量の制御因子の同定について、引き続き検討を進めていきたい。 特に後者については、脂肪細胞における甲状腺ホルモン応答性の検討の過程で、甲状腺ホルモンにより少なくともin vivoではTFG発現量が正に制御されていることが判明した。培養細胞では甲状腺ホルモン添加によるTFG発現量の増加は明らかでなく、甲状腺ホルモンによる直接的な転写制御ではなく、何らかの別の因子が介在する可能性が高いと考えている。 特に後者については早期の論文化を目指し、検討を継続する。
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