研究課題/領域番号 |
21K08587
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
曽根 正勝 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 主任教授 (40437207)
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研究分担者 |
藤倉 純二 京都大学, 医学研究科, 助教 (70378743)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ミトコンドリア / 骨格筋 / ヒトiPS細胞 / 代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のA3243G変異を有する患者から疾患iPS細胞を樹立し、ヘテロプラスミーにより、同一の患者より、変異ミトコンドリアで占められるiPS細胞株と、変異ミトコンドリアを有さないiPS細胞株の両者を樹立している。そこで、これらヒトiPS細胞株から核遺伝子が同じでmtDNAのA3243G変異の有無のみが異なる骨格筋細胞を誘導し比較解析することにより、ミトコンドリア機能が骨格筋に及ぼす影響をin vitroで比較評価する系を確立する。その系を用いて骨格筋代謝にミトコンドリア機能が及ぼす影響を明らかにすると共に、その負の影響を改善する薬剤の開発にも応用する。
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研究実績の概要 |
昨年度までの研究で、2名のミトコンドリア病の患者から樹立したiPS細胞のうち、mtDNAのA3243G変異が検出できない細胞クローンと, 高率で変異を有する細胞クローンの両方から分化誘導し、骨格筋マーカーであるCKM、Myogenin、MHCを発現し骨格筋の形態を有する細胞の誘導に複数クローンで成功している。本年度は、これらミトコンドリア病疾患iPS細胞から誘導した骨格筋細胞において、mtDNA変異の有無による細胞機能の差異の解析を引き続き行っている。XF24 Extracellular Flux Analyzer(Seahorse Bioscience, Billerica, MA, USA)を用いてミトストレステストを行い、細胞当たりの酸素消費速度(Oxygen Consumption Rate;OCR)を解析した。その結果、患者1においてミトコンドリア変異を有するクローンからの誘導骨格筋は変異を持たないクローンからの誘導骨格筋に比較して有意に基礎呼吸のOCRおよびATP産生が低下する傾向にあった。患者2においても変異を有するクローンからの誘導骨格筋は変異を持たないクローンからの誘導骨格筋に比べ基礎呼吸のOCRおよびATP産生が低下する傾向を認めた。一方で、Extracellular Acidification Rate (ECAR)は両者とも有意差を認めなかった。またミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰの活性を定量した結果、患者1,2とも、ミトコンドリア変異を有するクローンからの誘導骨格筋は、有さないクローンからの誘導骨格筋に比べ、活性が低下する傾向にあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2名のミトコンドリア病の患者から樹立したiPS細胞から、mtDNAのA3243G変異が検出できない細胞クローンと, 高率で変異を有する細胞クローンの両方を確立・維持し、それらiPS細胞クローンからMyoDの遺伝子導入を介して骨格筋細胞を誘導できた。mtDNAの変異率は骨格筋誘導自体には影響を与えず、また分化誘導後のmtDNAの変異率も大きく変化せず、患者(宿主)の遺伝子背景は同じでmtDNAの変異率のみ異なる骨格筋細胞を作成することが出来た。これらの細胞におけるミトコンドリア変異の有無による細胞機能の違いの解析も順調に進んでいる。ただし、細胞のクローン間のバラツキも大きく、定量的なデータの比較には複数のクローンによる確認が必要であり、現在実験データの蓄積を進めて行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果から、mtDNA高頻度変異を有する誘導骨格筋細胞では、少なくともミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰの活性低下を介してミトコンドリアでの電子伝達系が障害され、ATP産生の障害を生じていることが示唆された。Preliminaryな実験において、mtDNA高頻度変異を有する誘導骨格筋細胞では低頻度変異細胞と比較して細胞のエネルギー供給源が電子伝達系から解糖系にシフトしていることも観察できており、先の得られた実験結果と矛盾しない。これまでの既報の研究ではホストのnDNAが異なる細胞同士の比較であったが、本研究ではホストのnDNAが同一で、mtDNAのみが異なる2群間でミトコンドリア機能の差異を観察できたことから、両群間におけるこのような細胞の性質の差異は、純粋にmtDNAの差異に基づいたものと結論付けられる。今後、両群間で、mtDNA数の違いがないか、ミトコンドリア合成に重要な役割を果たすPGC1αや骨格筋で糖の取り込みを担うグルコーストランスポーター(GLUT4)など各種遺伝子の発現の変化がないかなどの比較解析も行っていく。
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