研究課題/領域番号 |
21K08588
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
永井 尚子 愛知医科大学, 分子医科学研究所, 助教 (00367799)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | へパラン硫酸 / レプチン / レプチン受容体 / 細胞表面受容体 / ビオチンクロスリンカー標識ヘパリン / ビオチン化タンパク質 / レプチンシグナル伝達 / 視床下部 / エネルギー代謝 / ヘパラン硫酸 |
研究開始時の研究の概要 |
エネルギー恒常性維持の中枢として、視床下部は末梢組織から受け取った情報を統合し、自律神経支配などにより末梢組織の機能を調節する。視床下部におけるエネルギー恒常性維持において、脂肪組織から分泌されるレプチンが中心的な役割を果たすことが明らかとなってきた。申請者の作製した、ヘパラン硫酸 (Heparan Sulfate, HS) に硫酸基を転移するHS 6-O-硫酸基転移酵素-2のノックアウトマウスはエネルギー代謝低下の表現型を示し、同タンパク質は視床下部においてエネルギー代謝調節に関与する神経核に発現していた 。そこで、視床下部HSがレプチン応答性ニューロンに及ぼす影響を調べたいと考えた。
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研究実績の概要 |
哺乳類の中枢神経系にある視床下部は、エネルギーの摂取と消費のバランスを保つために精巧な制御機構を発達させてきた。その中でもレプチンシグナルは、エネルギーバランスに対する反応の仲介役として中心的な役割を担っている。報告者らは、主に細胞表面や細胞間隙に存在する硫酸化糖鎖の一種であるへパラン硫酸の存在がレプチンシグナルを制御することを見出した。 2023年度において(1)ヘパリンとレプチン受容体が相互作用する可能性を検討するためにVIPアッセイ(Visible immunoprecipitation assay)を行なった。FLAGタグを融合させたレプチン受容体(FLAG-CMV14(LepRdeltaC))を抗FLAG-tag M2ビーズに結合させ、ビオチン標識ヘパリン(へパラン硫酸に構造が類似し、より硫酸化度が高い)を反応させた後に、蛍光色素で標識したストレプトアビジンで染色すると、FLAGタグのみをM2ビーズに結合させた場合より蛍光強度が高かったため、ヘパリンとレプチン受容体が相互作用していると考えられた。 (2)細胞表面に発現しているレプチン受容体の安定性にへパラン硫酸が関与する可能性について検討した。へパラン硫酸分解酵素未処理の細胞ではレプチン受容体の蛍光強度はレプチン添加後90分後まで変化がなかったが、処理した細胞では0分後と比較して90分後は減弱していた。 (3)細胞内に発現しているレプチン受容体の挙動を調べる実験を行った。(2)とは逆に、へパラン硫酸分解酵素未処理の細胞ではレプチン受容体の蛍光強度はレプチン添加90分後は減弱していた。処理した細胞では0分後と90分後で変化がなかった。(2)と(3)の結果から、細胞表面のへパラン硫酸は、レプチン刺激時に、細胞表面レプチン受容体の発現を保持するために必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)2023年度中にマウスを用いた解析を行う予定であったが、投稿論文の査読者からの指摘により、へパラン硫酸がレプチンシグナル伝達を制御するメカニズムに関して細胞レベルでのより詳細な解析を行うことになったため、細胞を用いた実験系を新たに立ち上げる必要があった。 (2)表面プラズモン共鳴解析装置(Biacore)を用いてレプチン、レプチン受容体とヘパリンの相互作用解析を行う予定であったが、装置の故障により、解析方法の変更を余儀なくされた。複数の方法について予備実験を行い、最終的にVIPアッセイ法を採用した経緯があり、一定の結果は得られたものの予定通りに実験が進まなかった。 (3)へパラン硫酸がレプチンシグナル伝達を制御するメカニズムに関して、細胞を用いた解析を行った結果、へパラン硫酸が細胞表面レプチン受容体の発現量維持に関与していることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
報告者は今後、下記の実験(1)(2)を行い、レプチンシグナル伝達へのへパラン硫酸の関与とそのシグナル制御機構について明らかにする。 (1)レプチンシグナル伝達に関与するへパラン硫酸プロテオグリカンの同定:完全長のレプチン受容体を発現するNeuro2A細胞を抗レプチン受容体抗体と複数の抗へパラン硫酸プロテオグリカン抗体で細胞染色し、染色部位を比較することによってレプチンシグナル伝達に関与するへパラン硫酸プロテオグリカンを同定する。該当するへパラン硫酸プロテオグリカンの発現をsiRNAなどを用いて抑制し、レプチンシグナル伝達が減弱するか否かを調べる。さらにマウス脳発現アトラスデータを解析し、レプチン受容体が発現する細胞で共発現するへパラン硫酸プロテオグリカンを同定する。さらにマウス脳の免疫染色によりレプチン受容体とへパラン硫酸プロテオグリカンが同部位で発現するかに関しての確認を行う。 (2)Hs6st2 ノックアウトマウス脳におけるレプチン取り込みの解析:Hs6st2 ノックアウトマウス脳においてレプチンシグナル伝達が低下する原因として、レプチンの取り込みあるいは拡散が阻害されている可能性について検討する。一晩絶食させたマウスに蛍光ラベルしたレプチンを投与する。経時的にマウス脳を採取し、1から2 mmの厚さにスライスした後に透明化を行い、蛍光レプチンの分布を多光子顕微鏡にて観察する。あるいは、レプチン投与後、経時的に採取したマウス脳をホルムアルデヒド固定してパラフィン切片を作製し、抗リン酸化STAT3抗体で染色することによりレプチンの拡散部位を解析する。
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