研究課題/領域番号 |
21K08658
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
森井 真也子 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (10375280)
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研究分担者 |
海老原 敬 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20374407)
渡部 亮 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (80638255)
山形 健基 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (90869900)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肝星細胞 / 肝線維化 / Runx / FoxD1 / 腸管不全合併肝障害 / 肝臓星細胞 / ω3系脂肪酸 |
研究開始時の研究の概要 |
静注用ω3系脂肪製剤の腸管不全合併肝障害に対する有効性が報告されており、申請者も本剤の投与によって肝線維化改善を得た。また肝臓星細胞 (hepatic stellate cells, 以下HSC) は、病的条件下に肝線維化を誘導する。申請者らはω3系脂肪製剤がHSC活性化を抑制すること抑制されることを明らかにした 。さらに、本研究では、新規HSC機能欠損マウスを用いて、肝線維化を改善するHSC活性化抑制の新たな作用点を明らかにし、IFALDの新たな治療ターゲットを見出すことを目標とする。
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研究実績の概要 |
近年、静注用ω3系脂肪製剤の腸管不全合併肝障害 (intestinal failure-associated liver disease : 以下IFALD) に対する有効性が報告されている。肝障害では肝星細胞(hepatic stellate cells : 以下HSC)が活性化し細胞外マトリックスを分泌して肝線維化を誘導する。申請者らは培養肝星細胞にω3系脂肪製剤を添加することでTGFβ経路の抑制を介してHSC活性化が抑制されることを明らかにしているが、生体内におけるω3系脂肪製剤の作用は未だ不明である。 定常時・および肝線維化誘導時のマウスHSCの単細胞解析ではHSCは均一な集団であることが示されているが、より線維化を促進するHSC亜集団を単離、特定し標的にすることは、新しい治療法を開発するために不可欠であるとの主張もある。申請者らは「HSCの中で主に肝線維化に寄与する亜集団が存在し、IFALDを誘導するか?」という疑問のもと、HSCが全身の毛細血管を被覆する周細胞に属する細胞であることに着目し、胎生期に間葉系前駆細胞に一過性に発現する転写因子FoxD1によるフェイトマッピングが可能なマウスを作成した。このマウスでHSCを解析したところFACSで3%の細胞がFoxD1によって標識されており、新たな亜集団の存在が示唆された。そこで、本研究ではこの新たなHSC亜集団の肝線維化における意義を解析することを目的とし、HSC活性化抑制の新たな作用点を明らかにすることで、IFALDの新たな治療ターゲットを見出すことを将来的な目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Foxd1の発現によって標識されるHSCをここでは、Foxd1-fm+ HSCとする。筆者らは定常状態・肝線維化状態においてマウスHSCの中でFoxD1-fm+ HSCとFoxD1-fm-HSCをフローサイトメトリーによってそれぞれほぼ100%の純度で分離し、培養するプロトコルを確立した。また、生体マウスの還流固定により、Foxd1の発現で標識された細胞を、組織学的に同定することが可能となった。 また、四塩化炭素投与による肝硬変マウスにおいてもFoxD1+HSCはHSC全体の3%程度と不変であることを確認したうえで、定常状態・肝線維化状態でそれぞれ単離したFoxD1-fm+ HSC と FoxD1-fm-HSC を用いてトランスクリプトーム解析を行ったところ、FoxD1-fm+ HSC と FoxD1-fm-HSCでは肝線維化に関して機能的な差異を認めなかった。また、トランスクリプトームレベルではHSCにFoxd1の発現を認めなかったため、HSCの前駆細胞でFoxd1を発現する細胞が存在することが考えられた。そこで、胎児期の肝臓にFoxd1陽性前駆細胞が存在する可能性を考え検討した結果、胎生17.5日頃、一過性にFoxd1陽性desmin陽性のHSC前駆細胞が出現し、胎生20.5日にはFoxd1の発現が消失した。これは、過去に示されている結果と一致していた。 また、HSCの線維化に寄与するとされる転写因子Runxの機能欠損をFoxd1陽性細胞で誘導し、四塩化炭素投与により肝線維化誘発実験を行ったところ、コントロールに比し線維化の改善を認めた。以上よりFoxd1陽性HSC前駆細胞の肝線維化における重要性が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
Foxd1の発現で標識された細胞を、組織学的に同定することが可能となったので、これが、HSCとどの程度一致するか、全HSCに占める割合がフローサイトメトリーで示されたものと一致するかを検討する。また、HSCにおけるRunxの機能を解析するために、Runx機能欠損HSCの筋繊維芽細胞誘導能を評価する。 四塩化炭素投与による肝線維化誘発実験の次は、よりIFALDの病態に則した短小腸モデルマウスの肝障害におけるRunxの機能解析を考えている。Runx1をIFALDの新たな治療標的とすることができれば、Runx1を阻害する化合物は既に開発されているため、臨床において新たな治療のオプションになる可能性がある。
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