研究課題/領域番号 |
21K08669
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田原 裕之 広島大学, 病院(医), 助教 (30423354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ヒト化マウス / 抗体関連拒絶反応 |
研究開始時の研究の概要 |
臓器不全に対する移植医療は、年々治療成績向上を遂げているが、依然として制御困難な慢性拒絶反応によるグラフト廃絶に対する確立された治療法はなく、臓器移植後のさらなる長期生着向上に対して大きな障壁となっている。従来解析困難であった同種移植におけるヒト細胞のHLA抗体性拒絶反応メカニズムをヒト化マウスモデルにより解明し、その制御法の確立を目指す。移植患者末梢血を用いて、患者“自己”の潜在的病態を反映したヒト化マウスモデルを作成することで、抗体関連型拒絶反応の新規治療開発に臨床応用することが期待でき、慢性拒絶反応の克服や従来移植禁忌とされてきたクロスマッチ陽性レシピエントへの移植適応拡大が期待される。
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研究実績の概要 |
MHC DKO NSGマウスを用いた抗ドナー特異的抗体産生ヒト化マウスモデルの作製 前年度からヒト化マウスの改良を継続し、マウスMHC ClassI及びClassIIをダブルノックアウトしたNSGマウス(MHC DKO NSGマウス)を用いた。MHC DKO NSGマウスへのヒト細胞移入は予想通り通常のNSGマウスと比べB細胞が長期間保持され、またGVHDを生じにくいことから長期間生存したが、ヒト免疫担当細胞のキメラ率はNSGヒト化マウスよりも明らかに低率であった。 このMHC DKO NSGマウスに、まずレシピエントおよびドナー末梢血をマウス脾臓内静注し、Day1にドナーPBMCを追加免疫投与し、抗ドナー特異的HLA抗体測定を行ったところ、十分量なヒトTotal IgG産生は確認できたが、抗ドナー特異的HLA抗体産生は安定した産生が得られなかった。しかしながら、一部のMHC DKO NSGヒト化マウスで目的のドナー特異的HLA抗体産生が確認できた。ヒトPBMCの組み合わせを異にしても一部のヒト化マウスでドナーHLA抗原抗体産生が確認された。しかしながら再現性に乏しく、ドナーおよびレシピエントの細胞接触過程に依存するため特異的抗体産生は安定化しないではないかと推測された。 一方で、抗体産生促進因子であるヒトIL4, IL6などのサイトカイン添加による抗原特異的HLA抗体産生促進効果に対してin vitroでドナーおよびレシピエントPBMC混合培養下に血清中のHLA抗体産生を確認するプロトコールを開始している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト化マウスモデルの改良を繰り返し継続したことにより、十分量のIgG抗体価を示す抗ドナー特異的HLA抗体産生が一部ながら確認することができた。ただし再現性に乏しく、細胞接触に依存していると判断したため、より安定したモデルとするために、抗体産生促進物質(ヒトサイトカインなど)の投与付加を試みている状況である。 また、ヒト化マウス体内でヒトPBMCが抗体産生に至る抗体産生メカニズムを解明するためにヒト化マウス脾臓・骨髄・末梢血中の抗体産生細胞フェノタイプの解析が行えていなかったため今年度に施行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
MHC DKO NSGマウスに可溶性ヒトCD40リガンドを投与下にレシピエント末梢血を静注し、Day1にドナーPBMCをヒト抗PD-L1抗体と共に脾臓内投与し、以降ドナーPBMC抗原暴露を複数回行い、抗ドナー特異的HLA抗体産生誘導を試みる。目的とする抗体産生が得られない場合は、抗体産生細胞分化に必要なサイトカインを添加する。遺伝子相同性検索プログラムBLASTでデータベース検索したマウスサイトカインのうちヒトへ機能性を示さず遺伝子相同性が低い、ヒト抗体産生促進因子(IL-4, IL-6, IL-15, IL-21, TACI(transmembrane activator and cyclophilin ligand interactor)-Ig)を漸次in vivo投与しドナー特異的HLA抗体産生を試みる。抗体産生形質細胞分化に必要なIL-6とIL-21は特に重要であると考えている。さらにはドナー末梢血上のHLA抗原がレシピエント細胞に十分に認識されて いない可能性を考え、ドナー末梢血をConcanavalin Aで刺激しHLA抗原発現を増強させた状態でのin vivo抗原暴露投与を考慮する。こうして目的のドナー特異的HLA抗体産生ヒト化マウスが安定して作製できれば、ヒト化マウス中の各組織(骨髄・脾臓・腹腔内・リンパ節)からB細胞フェノタイプ(記憶B細胞・形質細胞・制御性B細胞)をFlowcytometryやFACS Aria セルソーターで解析し抗体産生細胞を特定し、合成HLAペンタマーを用いたELISPOT法で抗原特異的HLA抗体産生B細胞の同定および機能解析を行う
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