研究課題
基盤研究(C)
近年の新薬開発費用の高騰を受けるように、ドラッグリポジショニング(既存薬再開発)への注目が高まっている。本研究では、日米(熊本大学消化器外科学・Brigham and Women’s Hospital, USA)の消化器癌データベースを対象に、がん代謝・腫瘍免疫・マイクロバイオームを標的とした新規治療法・癌予防法をドラッグリポジショニング(Drug repositioning, 既存薬再開発)により開発することである。更にin vitroによる機能解析を行う事で、治療薬ががん代謝、腫瘍免疫、マイクロバイオームに与える機序を解明する。
消化器癌においてマイクロバイオームは癌進展に寄与する可能性があり、中でもFusobacterium nuceatumは食道癌・大腸癌においてその重要性が注目されている。熊本大学消化器外科学での食道癌切症例300例を対象に研究を行い、腫瘍内F. nucleatum が腫瘍周囲へのリンパ球浸潤peritumoral lymphocytic reactionと逆相関を占めすことを明らかにし、Br J Cancerに報告した。食道癌診療において免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitors, ICIs)は進行・再発食道癌に対する標準治療として承認され、食道癌集学的治療は大きな変化を遂げている。近年、高BMI(body mass index)とICIの治療効果に関する報告が散見され、癌免疫治療における体組成の重要性が注目される。今回、食道癌ICIs施行例における体組成(BMI、腹囲、内臓脂肪、皮下脂肪)の臨床学的意義を明らかにすべく検討を行った。Nivolumab療法施行例において、ICI療法前腹囲は初回CTにおける病勢コントロール率と有意に相関し(P<0.05)、腹囲の大きい症例では有意に病勢コントロールが良好だった。腹囲は無増悪生存の延長とも有意に相関し(Log-rank P<0.05)、多変量解析においても独立予後規定因子だった(P<0.05)。FP+Pembrolizumab療法施行例において同様に検証すると、ICI療法前腹囲は初回CTにおける病勢コントロール率と正の相関を示した(P<0.05)。更にBMIは腫瘍免疫栄養状態の指標であるPrognostic nutritional index(PNI)と有意な正の相関を示した(P<0.05)。本内容を論文投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
様々なマーカーの測定及びそれらを含めたデータベースの構築を目指す。その後、様々な臨床情報・薬剤情報・生活情報と統合解析を行う。臨床検体を用いた統合解析による結果を検証すべく、消化器癌細胞株を用いた基礎研究によって詳細な機能解析を行う。がん代謝・腫瘍免疫・マイクロバイオームを標的とした新規治療法・癌予防法をドラッグリポジショニング(Drug repositioning, 既存薬再開発)により開発することを目指す。
すべて 2023 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
British Journal of Cancer
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