研究課題/領域番号 |
21K08689
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
原田 恭一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80804822)
|
研究分担者 |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
塩崎 敦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40568086)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 膵臓外科学 / 癌幹細胞 / イオンチャネル |
研究開始時の研究の概要 |
近年、様々なイオン輸送体が癌細胞機能を制御することが知られている。本研究では、膵癌における電位依存性K+チャネル(voltage-gated potassium channel: VGKC)の発現機能解析を行うとともに、"癌幹細胞特異的に発現したVGKCの制御により、膵癌の進展が抑制できる" という実験仮説の検証を行う。その結果から、癌幹細胞内イオン濃度変化を介した新たな腫瘍形成メカニズムを解明し、VGKC阻害薬である4-アミノピリジンを応用した、膵癌に対する斬新な治療概念の構築を目指す。
|
研究実績の概要 |
膵癌細胞株PK59から癌幹細胞を抽出・培養し、抗癌剤耐性・再分化能などのStemnessを確認した。網羅的遺伝子発現解析からKCNB1、KCNC1、KCND1等のvoltage-gated potassium channels (VGKC)が、癌幹細胞において高発現していることを見出した。更に、その阻害剤4-Aminopyridineの癌幹細胞増殖抑制効果や、抗癌剤の作用増強効果をin vitro、in vivoで確認した。これらの結果は、英文論文としてまとめ報告した(Int J Oncol. 2021)。同時に、ヒト膵癌組織におけるKCNB1の発現レベルを解析したところ、ALDH1A1と正の相関を示すことが明らかとなった。cBioPortal databaseを用いた解析でも、KCNB1とALDH1A1のmRNA発現は正の相関を示した。PK59細胞にKCNB1 plasmidを導入したところ、細胞増殖が増強された。ヒト食道癌組織において、癌細胞の細胞膜・細胞質にKCNB1の発現が確認された。生存解析では高発現群では低発現群に比べ有意に予後不良で、多変量解析では高発現は独立した予後不良因子であった。食道癌細胞株TE5、KY70に対してKCNB1 siRNAをトランスフェクションしたところ、細胞増殖能、遊走・浸潤能が低下しアポトーシスが惹起された。また、胃癌細胞株MKN74から癌幹細胞を抽出しCACNA2D1 とCACNB4が高発現していることを見出し、その阻害剤アムロジピン、ベラパミルの抑制効果についてまとめ報告した(Ann Surg Oncol. 2021)。 一方で、胃癌におけるCACNA2D1 (Ann Surg Oncol. 2022)、Anoctamin 5 (World J Gastroenterol. 2022)、TRPV2 (Ann Surg Oncol. 2022)などのイオン輸送体の発現機能解析を行った。また、食道癌におけるNADPH oxidases 2 (Ann Surg Oncol. 2022)の発現機能解析や、ニボルマブ投与後の再発予測因子としてのリンパ球・CRP・アルブミンの意義について解析した(Oncol Lett. 2022)。更に、大腸癌における腫瘍間質比の臨床病理学的意義を検証し報告した(Dis Colon Rectum. 2022)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のうち、ヒト膵癌組織におけるVGKC・癌幹細胞マーカー発現の相関解析、VGKC制御による癌幹細胞特異的な増殖抑制効果、及び抗癌剤併用効果の検討などの基礎実験は、ほぼ終了している。ヒト食道癌組織におけるKCNB1発現機能解析や、消化器癌における種々のイオン輸送体の機能解析も進展しており、研究成果は既に国内外の学会で発表し、英文雑誌にも投稿・掲載されている。現在、KCNB1 siRNAを導入した癌細胞株の遺伝子発現変化をmicroarrayにより網羅的に解析しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、各種抗癌剤・分子標的治療薬による抗腫瘍効果が、VGKC阻害剤4-Aminopyridineの併用により増強されるか否かを解析する。また、癌幹細胞におけるKCNB1・イオン動態を介する細胞周期・アポトーシス制御機構解明を進めるとともに、in vivoにおけるVGKC制御による皮下腫瘍成長抑制効果、及び抗癌剤併用効果について検討する予定である。
|