研究課題/領域番号 |
21K08719
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
大塚 由一郎 東邦大学, 医学部, 教授 (70287499)
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研究分担者 |
伊藤 悠子 東邦大学, 医学部, 助教 (80516211)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 腹腔鏡下肝切除術 / 系統的肝切除術 / 門脈灌流領域同定 / 肝内門脈穿刺染色法 / 超音波ガイド下肝内門脈穿刺術 / 門脈還流領域同定 / 腹腔鏡下肝切除 / トレーニングシステム / 系統的肝切除 / 肝内門脈穿刺 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
腹腔鏡下での肝内門脈穿刺を開腹術と同様に行うために、日本メディカルネクスト社(大阪)とともに新たな超音波用穿刺ガイド器具を共同開発した。本研究では、新開発穿刺ガイド器具の有用性を検証するとともに、多くの外科医が腹腔鏡下での肝内門脈穿刺手技を獲得できるトレーニングシステムを開発する。
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研究実績の概要 |
近年、肝疾患に対する腹腔鏡下手術の進歩は目覚ましく、肝癌の根治的治療を行ううえで重要な腹腔鏡下系統的肝切除も施行されるようになった。系統的肝切除 を行う際、担癌領域の肝内門脈枝を超音波下で穿刺し、色素を注入することで出現した変色域から肝の解剖学的な区域あるいは亜区域としての還流領域を同定する肝内門脈穿刺染色法が用いられており、開腹術においてその手技は確立されている。 しかしながら、本手技を腹腔鏡下にて行う場合、体表の穿刺点から気腹による腹腔内を経由するため,超音波下とはいえ経肝的に目標門脈枝を穿刺することは、これまで技術的に困難であると考えられてきた。そこで我々は、本手技を開腹術と同様に行うべく、腹腔鏡超音波用穿刺ガイド器具を開発した。我々は腹腔鏡下での肝内門脈穿刺を開腹術と同様に行うために、日本メディカルネクスト社(大阪)とともに新たな超音波用穿刺ガイド器具を共同開発した。本器具により,安定した手技で目標門脈を穿刺でき,より正確な腹腔鏡下肝系統的切除を行うことが可能となる。 本研究の目的は、新開発穿刺ガイド器具の有用性を検証するとともに、多くの外科医が腹腔鏡下での肝内門脈穿刺手技を獲得できるドライボックスを用いたトレーニングシステムを開発することである。難易度が極めて高い腹腔鏡下肝内門脈穿刺手技を本システムによって誰もが正確に獲得できれば、動物を用いたトレーニングの代替となるうえ、獲得された手技は直ちに臨床応用でき、腹腔鏡下肝切除の技術発展に大きく貢献すると考えている。今後は、2023年度までに追及した腹腔鏡下肝内門脈穿刺トレーニングに適した肝臓ファントムを用いて、本トレーニングシステムが腹腔鏡下での肝内門脈穿刺技術の獲得に有用であるかどうかの検証を行い、論文発表を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021-2022年度では、腹腔鏡下肝内門脈穿刺トレーニングモデルの作成およびシステムの確立を目指した。我々が開発したラパロプローブ用ガイドを用い、穿刺用肝臓モデルを用いた腹腔鏡手術トレーニングシステムを作成した。内視鏡外科手術用トレーニングボックス(以下ボックス)は、ラパロプローブ用ガイドの差し込みや、腹壁からガイドへ向けた針穿刺のトレーニングに適すよう、ルーフにはどこからでも穿刺可能なマットを使用した。ボックス内に肝臓ファントムを設置し,トロッカーよりラパロプローブを挿入後、ラパロプローブガイドを装着し、内視鏡下にボックス外よりPTCD針にて目標門脈枝を穿刺できるシステムを確立した。2023年度より、腹腔鏡下肝内門脈穿刺トレーニングにより適した肝臓モデルを作成することに努めた。肝臓モデルは超音波透過性のファントムを用い、ヒトと同様の大きさと解剖学的な臓器内脈管を植物由来ゲルを用いて3Dプリンターで構築し、肝臓を穿刺した際の硬度・弾性がヒトの場合と同等となるよう成分を調整した。特に肝臓モデルの血管部分は穿刺した際に実際の感触により近い素材を探求した。これらにより、これまで以上に超音波にて視認性が高く、かつ穿刺触感が臨床に近いモデルを開発しつつある状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
腹腔鏡下肝内門脈穿刺トレーニングにより適した肝臓モデルを用いて、本トレーニングシステムが腹腔鏡下での肝内門脈穿刺技術の獲得に有用であるかどうかの検証を開始した。臨床において開腹下あるいは腹腔鏡下肝切除術で超音波ガイド下に門脈穿刺を施行した経験のない被検者(外科医)20名を対象に穿刺の方法の説明を行う。次にトレーニングシステムを用いて超音波ガイド下に穿刺実験を行うが、ラパロプローブ用ガイドを用いる群(使用群:10名)と用いない群(未使用群:10名)に分ける。穿刺部位はファントム内の企図した門脈枝とし、被検者は10回ずつ穿刺を行う。穿刺の成功は針先が門脈茎の正中をとらえられた場合とする。針のボックスルーフからの引き抜きや方向の変更は1回と算定する。穿刺10回中に成功した回数、成功するまでに要した穿刺回数、穿刺に要した時間を記録する。ガイド使用・未使用群の比較では、成功回数の比較には割合の差の検定、成功までの穿刺回数の比較はカイ二乗検定、穿刺に要した時間はt検定もしくはウィルコクソン検定を使用する。また両群のラーニングカーブを算出し比較解析することで、ラパロプローブ用ガイドおよびトレーニングシステムの有用性を明らかにする。2024年度ではこの結果を論文発表する。
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