研究課題/領域番号 |
21K08740
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
細谷 好則 自治医科大学, 医学部, 教授 (30275698)
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研究分担者 |
北山 丈二 自治医科大学, 医学部, 教授 (20251308)
堀江 久永 自治医科大学, 医学部, 教授 (20316532)
佐田友 藍 自治医科大学, 医学部, 助教 (40528585)
齋藤 心 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60382909)
倉科 憲太郎 自治医科大学, 医学部, 講師 (70382900)
宮戸 秀世 自治医科大学, 医学部, 講師 (90813163)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 迷走神経 / 腹膜播種 / 肝転移 / がん免疫微小環境 / 腹腔内マクロファージ / 大網 / 上部消化管癌 / 再発 / 発がん |
研究開始時の研究の概要 |
迷走神経切除の腫瘍学的意義は完全には解明されていない。食道裂孔部で迷走神経を完全切除するマウスモデルを作成し、ストレス下におけるがんの肝転移、腹膜転移および新規大腸癌の発生に及ぼす迷走神経切除の影響を検証することで、消化器癌の発生・進行過程における迷走神経シグナルの生物学的役割を解明し、上部消化管癌に対する根治切除術における迷走神経切除の意義を問う。
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研究実績の概要 |
8-10週齢のマウスを全身麻酔下に開腹し、実体顕微鏡下に横隔膜下で迷走神経を切離するとともに幽門形成術(迷走神経切離群)を施行、Sham operation群では迷走神経は受動、確認のみ行い、幽門形成術(迷走神経温存群)を行った。この処置を行った3週後、腹腔内のCD3(+)T細胞、Gr1(+)好中球、F4/80マクロファージの割合が健常状態に戻ることを確認した後、YTN16P(1x105個)を腹腔内投与し、2週後の腹膜播種の成立状況を観察したところ、大網および腸間膜の播種数はsham operation群と比較して迷走神経切離群において有意に増加していた(大網: 2.8 ± 1.8 vs 5.2 ± 2.4, p<0.01, n=13、腸間膜: 37 ± 13 vs 62 ± 18, p=0.025, n=13)。また、迷走神経切除群にて、腹腔内のGr1陽性好中球、F4/80マクロファージの割合が増加、CD3(+) T細胞の割合が減少していた。顕微鏡的腹膜播種陽性状態での手術の影響を考えるために、YTN16P(1x105個)を腹腔内投与した直後、1, 3, 5日目に、上述の迷走神経切離+幽門形成術を施行し、その後の腹膜播種の形成状態を検討したところ、直後および1日目では幽門部に大きな播種を形成し、播種の見られないうちに死亡するが、3,5日では腸間膜に有数の播種を形成することから、この方法で迷走神経切除の影響を検討することが可能であることが判明した。 C57/Bl6マウスの脾臓にYTN16を注入し、肝転移巣を形成させることを繰り返して、in vivo selectionにより、1x105個の細胞を脾臓内注入することで高頻度に肝転移を起こすマウス胃がん細胞株YTN16Hを作成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)実体顕微鏡下にマウスの迷走神経切離術、幽門形成術を行う手技を確立し、迷走神経シグナルが腹膜播種の成立および腹腔内免疫細胞の動態に影響を与える事実が確認できた。 (2)上記の動物モデルは、迷走神経切除後の生体における腹腔内の現象を見る上では良好なモデルであるが、実際には腹腔内に遊離癌細胞が存在した状態での手術手技の影響を確認することが最も重要である。そこで顕微鏡的腹膜播種陽性状態(P0CY1に相当する)における、迷走神経切除が腹膜播種の形成や腹腔免疫にどのような影響を与えるかを検討するIn vivoの実験系を確立することができた。これを用いて、より臨床に近い状態での迷走神経切除の意義を検討することが可能となった。 (3)迷走神経シグナルが肝転移に及ぼす影響をin vivoで検討するための細胞株を樹立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)腹腔内遊離癌細胞が存在した状態での迷走神経切除の影響を検討するために、YTN16P(1x105個)を腹腔内投与した3日目および 5日目に、迷走神経切離+幽門形成術を施行し、その後の腹膜播種の形成状態をSham operation群と比較検討する。 (2)腹膜播種成立時におけるF4/80mid-high, MHC classⅡhighマクロファージが、組織由来のLarge peritoneal macrophage (LPM)と骨髄由来のsmall peritoneal macrophage (SPM)のどちらに由来するのかを調査するため、PKH26PCLを用いてあらかじめLPMを蛍光染色しておき、数日後にYTN16Pを接種、その2週間後の腹膜播種を形成した時点でF4/80mid-high, MHC classⅡhighマクロファージにおけるPKH26PCLの染色を確認する。また、播種組織の凍結切片を作成し、免疫染色を行い、腹膜播種の形成過程でSPMとLPMの性質がどの様に変化し、腹膜播種成立をきたすかを解明する。過去の報告で大網で産生されるレチノイン酸がLPMの分化を制御すること、迷走神経シグナルはマウス腸管のCX3CR1+マクロファージにおけるレチノイン酸産生を制御することが示されていることから、迷走神経シグナルが大網におけるレチノイン酸産生およびLPMの分化にどう関与しているかを検討する。 (3)マウスの迷走神経切離術を施行し、YTN16H(1x105個)を脾臓内に注入し、肝転移の成立の変化を検討する。また、その組織内の免疫細胞を組織染色、flowcytometryで検討し、その免疫学的機序を解明する。
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