研究課題/領域番号 |
21K08757
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中川 茂樹 熊本大学, 病院, 特任助教 (10594872)
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研究分担者 |
馬場 秀夫 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (20240905)
山下 洋市 株式会社麻生(株式会社麻生飯塚病院医学研究推進本部), 外科, 部長 (00404070)
今井 克憲 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (60555746)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 膵癌 / Molecular gene signature / 予後 / バイオマーカー / Cofilin-1 / ARDHGEF2 / 治療標的 / gene signature |
研究開始時の研究の概要 |
膵癌は癌の中でも極めて予後が悪いことが知られている。世界的に見ても膵癌は死亡者数の上位を占めており、予防や早期診断、治療法、再発予防の開発は急務であると言える。このため、再発高リスク群を同定するマーカーの開発や、それに対して有効な分子標的薬の開発が急務である。 今回我々は、網羅的な遺伝子データベースに基づいて ①再発ハイリスク群を同定するバイオマーカーを作成すること ②網羅的な遺伝子解析を用いて再発ハイリスク群に対して効果的な治療標的を検討すること ③候補となる治療標的遺伝子の作用機序の解明及びヒト検体を用いた効果の検証すること を目的とした。
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研究実績の概要 |
膵癌は癌の中でも極めて予後が悪いことが知られている。世界的に見ても膵癌は死亡者数の上位を占めており、予防や早期診断、治療法、再発予防の開発は急務であると言える。膵癌根治切所術後の再発は肝転移・腹膜播種・肺転移などが主であり、再発治療や再発予防には化学療法が主に用いられる。膵癌に対する化学療法では、GnPやFOLFIRINOXの有効性が示されており、術前化学療法としても用いられるようになってきたが、有効な分子標的治療薬が存在しないのが現状である。このため、再発高リスク群を同定するマーカーの開発や、それに対して有効な分子標的薬の開発が急務である。今回我々は、網羅的な遺伝子データベースに基づいて①再発ハイリスク群を同定するバイオマーカーを作成すること②網羅的な遺伝子解析を用いて再発ハイリスク群に対して効果的な治療標的を検討すること③候補となる治療標的遺伝子の作用機序の解明及びヒト検体を用いた効果の検証すること を目的とした。本年度は、膵癌における予後予測Molecular marker及び薬物治療標的として有用な遺伝子を検索するため、膵癌症例80例のRNAシークエンスデータベースであるGSE21501を用いたin silico解析を行った。cox比例ハザードモデルにより再発に対するハザード比が3.0よりも大きい、または-3.0よりも小さい遺伝子44遺伝子を選び、Molecular gene signatureを作成した。これをTCGAデータベースを用いて検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌データベースであるGSE21501を用いてパスウェイ解析を行い予後不良症例と相関の強いMolecular pathwayを検索した所、PI3K-AKT-MTOR Pathwayが最も相関が強い事が分かった。薬物標的遺伝子として、PI3K-AKT-MTOR Pathwayを構成する遺伝子の中から最も予後に対する比例ハザード比の高いCofilin-1及びARDHGEF2を選択し、機能解析を行った。 今期は特にARHGEF2についての実験を進めている。染色濃度と染色領域によってARHGEF2発現を評価し、高発現群(n = 123)および低発現群(n=78)の2群に分類すると、全生存期間(OS)、無再発生存期間(RFS)ともに高発現群で有意に不良であった(OS: p = 0.0018、RFS: p = 0.0007)。さらにOS、RFSに関する予後因子を多変量解析にて検討した。OSに関してはCA19-9 > 37 U/L(RR = 2.20, p = 0.0003)、TS≧3(RR = 1.93, p = 0.017)、病理学的リンパ節転移陽性(RR = 2.07, p = 0.0006)、ARHEGF2高発現(RR = 1.52, p = 0.047)が独立予後不良因子であった。またRFSに関してはCA19-9 > 37U/L(RR = 1.84, p = 0.0018)、R1切除(RR = 2.50, p = 0.006) 、ARHGEF高発現(RR =1.77, p = 0.0034)が独立予後不良因子であった。また、また、アクチン制御タンパクの1つであるcofilin-1はRhoAの下流に存在し、癌の浸潤に関与すると言われており、cofilin-1についても染色濃度と染色領域によってその発現を評価した。高発現群(n = 106)および低発現群(n = 95)の2群に分類してARHGEF2との相関を評価したところ、正の相関を示した(p = 0.04)。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌細胞株を用いたCofilin-1及びARDHGEF2の機能解析及び阻害剤の効果検証 膵癌細胞株を用いたin vitro/in vivoの実験によって、Cofilin-1及びARDHGEF2の癌細胞における働きを明らかにする。当科にて保有している8種類の膵癌細胞株に対して、Cofilin-1及びARDHGEF2発現プラスミドベクターを導入し強制発現を、siRNAを用いて発現抑制を行った細胞株を作成し、機能解析を行う。MTT assay にて増殖能。FACSを用いて細胞周期及びアポトーシス、invasion assayにて浸潤能、scratch assayにて遊走能に与える影響を明らかにする(図4)。更に、癌細胞より分泌されたDKK2の働きを検証する為に癌細胞と免疫細胞の共培養を行いCofilin-1及びARDHGEF2がリンパ球に対して与える影響を明らかにする。 ヒト癌細胞組織のスライスを用いたex vivo培養系を用いて、腫瘍微小環境を含んだ状態でのCofilin-1及びARDHGEF2阻害剤のヒト検体における効果の検証 手術による切除後すぐの胆管癌組織を、厚さ300マイクロメートルにスライスし、細胞培養用メディウムを用いて培養を行う。この組織に対してCofilin-1及びARDHGEF2阻害剤を投与し、MTSアッセイにてそのviabilityを評価する。また、カルチャー後の蛋白、mRNAを回収してその蛋白、遺伝子発現の変化を評価する。このようなex vivoの実験系を用いてヒト胆管癌組織に対する薬剤の効果を評価することで、胆管癌組織中の免疫細胞をはじめとする間質細胞や微小血管などの腫瘍微小環境を残しつつ、薬剤感受性の評価を行う事が可能である。阻害剤単独及びPD-1阻害剤との併用を行い48時間培養した後、細胞のViability、リンパ球マーカーを測定し、効果を検証する。
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